こんにちは!
子どもが「見て、お空にクジラさんがいる!」なんて言った時、大人の私たちはつい「あれは雲だよ」なんて、真実を教えてしまいがちですよね。子どもの純粋な視点や発見に、つい現実的なツッコミを入れてしまうこと、ありませんか?
もちろん、それも大切なこと。でも、時々でいいから、子どもの見ている世界を一緒に楽しんでみるのも素敵だなって思うんです。
今回ご紹介するのは、まさにそんな「大人の常識」と「子どもの信じる心」の対比を美しく描いた英語絵本、『Snow』です。たった一人の信じる気持ちが、世界の色を変えていく。そんな静かな奇跡の物語です。
ここでは『Snow』の簡単なあらすじの他、文中に出てくる日常の英語表現、おすすめの読み聞かせ動画のご紹介や日本語訳などを掲載しています。
お話のあらすじ
物語の舞台は、空も、屋根も、街全体も、すべてが灰色に沈んだ街。
そんな色のない世界に、ぽつり、と一粒の雪が舞い降ります。
「雪が降ってる!」と、犬を連れた男の子が嬉しそうに声をあげます。
でも、周りの大人たちはとってもクール。「たかが雪のひとかけらさ」「なんでもないよ」「どうせすぐ溶けるわ」。おじいさんも、帽子をかぶった男性も、傘をさした女性も、みんな少年の言葉を気に留めません。それどころか、ラジオやテレビまでが「雪は降りません」と断言する始末。
でも、雪たちはそんな人間の都合なんてお構いなし。ラジオも聞かず、テレビも見ず、ただただ静かに、でも確かに、降り続いていきます。果たして、少年が信じた真っ白な世界は、本当にやってくるのでしょうか…?
英語学習のポイント
この絵本はリズミカルな言葉の繰り返しが多く、英語の音の響きを楽しむのにもぴったりです。今回は、物語の雰囲気を掴むのに役立つ素敵な表現を2つご紹介します。
take one’s place 「〜の代わりとなる、〜の場所を占める」
本文では、”as soon as one snowflake melts another takes its place.”(一つの雪が溶けるとすぐに、別の雪がその場所を占める)という形で使われています。次から次へと雪が降り続く様子が目に浮かぶような表現ですよね。
これは「後を継ぐ」とか「取って代わる」といったニュアンスで、人や物に使えます。
例文:
When the captain retired, a young player took his place. (キャプテンが引退し、若い選手がその後を継ぎました)
New technology is always taking the place of the old one. (新しい技術は、常に古いものに取って代わります)
All (someone) know is… 「〜が知っているのは…だけだ、〜は…のことしか頭にない」
“All snowflakes know is snow, snow, and snow.”(雪たちが知っているのは、ただ雪であること、それだけ)という一文。周りの評価や情報に関係なく、自分たちの本質(雪であること)に従って降り続ける、という力強い意志を感じます。
「〜のことばかり考えている」というニュアンスで、日常会話でも使えるフレーズです。
例文:
He’s studying for his exam. All he knows is math right now. (彼は試験勉強中です。今、彼の頭の中は数学でいっぱいです)
All I know is I really want to eat some ice cream. (とにかく、今はアイスが食べたいってことしか考えられません)
読み聞かせ動画のご紹介
日本語訳
The skies are gray.
空は灰色です。
The rooftops are gray.
屋上は灰色です。
The whole city is gray.
街全体は灰色です。
Then one snowflake.
その後、1つの雪片。
“It’s snowing.” said boy with dog.
「雪が降っている」と犬を連れた少年は語った。
“It’s only a snowflake.” said grandfather with beard.
「それはただの雪片です」と髭をはやした祖父は言いました。
Then two snowflakes.
その後、二つの雪片。
“It’s snowing.” said boy with dog.
「雪が降っている」と犬を連れた少年は語った。
“It’s nothing.” said man with hat.
「なんでもない」と帽子をかぶった男性は言った。
Then three snowflakes.
その後、三つの雪片。
“It’s snowing.” said boy with dog.
「雪が降っている」と犬を連れた少年は語った。
“It’ll melt,” said woman with umbrella.
「それは溶けるでしょ」と傘を持つ女性は言った。
A few snowflakes float down and melt.
いくつかの雪片が浮遊して溶けます。
But as soon as one snowflake melts another takes its place.
しかし、1つの雪片が溶けるとすぐに、別の雪がその位置につきます。
“No snow,” said radio.
「雪はない」とラジオは語った。
“No snow,” said television.
“雪はない”とテレビが語った。
But snowflakes don’t listen to radio,
しかし、雪片はラジオを聞いていない、
snowflakes don’t watch television.
雪片はテレビを見ません。
All snowflakes know is snow, snow, and snow.
すべての雪片は知っている それは雪、雪、そして雪。
Snowflakes keep coming and coming and coming.
雪片が降り続く やってくる やってくる
circling and swirling,
旋回して、渦巻き、
spinning and twirling,
ねじれてクルクル回り
dancing playing,
踊って 遊んで
there, and there,
そこかしこで
floating, floating through the air,
浮かんでいる、空気の中を浮かんでいる。
falling, falling everywhere.
落ちてくる どこにでも落ちてくる
and rooftops grow lighter, and lighter.
そして屋根は明るくなります そしてより明るく。
“It’s snowing,” said boy with dog.
「雪が降っている」と犬を連れた少年は語った。
The rooftops are white.
屋根は白色です。
The whole city is white.
町全体が白色です。
“Snow,” said the boy.
「雪」男の子は言った。
最後に:小さな「希望」を否定しない心
というわけで、今回は絵本『Snow』をご紹介しました。
大人になると、経験や知識から「どうせ無理だろう」と未来を予測してしまいがちです。でも、この絵本は、そんな凝り固まった頭に、子どもの純粋な視点がいかに大切かを優しく教えてくれます。
もちろん、いつでも子どもの言うことを鵜呑みにする必要はありません。
でも、「そうだといいね」「本当にそうなったら素敵だね」と、その子の見ている希望に少しだけ寄り添ってあげる。たったそれだけで、親子の世界はもっと色鮮やかになるのかもしれません。灰色の日常に、小さな奇跡を見つける心を、いつまでも大切にしたいですね。