こんにちは!
「キラキラ星」や「メリーさんの羊」、「ロンドン橋」…。子供の頃に口ずさんだ、あの懐かしいメロディーを覚えていますか? あれらはみんな、「マザーグース」と呼ばれる、イギリスやアメリカで古くから伝わるわらべうたなんです。
実は、そんなマザーグースの中に、ちょっぴり可哀想(?)な女の子のお話があるのをご存知でしょうか。その子の名前は、リトル・ミス・マフェット。
丘の上でおやつを食べていたら、クモがにゅっと現れて、びっくりして逃げ出しちゃった。多くの人が知っているのは、きっとここまでのお話。なんだか、ちょっぴりあっけない幕切れですよね。
でも、もしも。そのお話に、誰も知らなかった「素敵な続き」があったとしたら…?今日は、そんなワクワクするif(もしも)の世界を描いた、伝統と新しさが融合した英語絵本『Little Miss Muffet』をご紹介します。
ここでは『Little Miss Muffet』の簡単なあらすじの他、文中に出てくる日常の英語表現、おすすめの読み聞かせ動画のご紹介や日本語訳などを掲載しています。
お話のあらすじ
小さな丘の上で、マフェットお嬢ちゃんが大好きなおやつ(カードとホエイ、つまりチーズみたいなものです)を食べていました。
するとそこへ、一匹のクモが、糸を伝ってスルスル〜っと隣に降りてきたのです!びっくりしたマフェットお嬢ちゃんは、「助けてー!」と叫びながら、一目散に森の中へと逃げていきました。
…と、ここまでは、皆さんが知っているマザーグースの通り。でも、この物語はここからが本番です。
クモは「怖がらせてごめんよ!」と、マフェットお嬢ちゃんを追いかけます。一方、森の奥で迷子になってしまったマフェットお嬢ちゃんは、泣きべそをかいていました。そんな彼女の前に現れたのは、なんとお腹を空かせた大きなオオカミ!
絶体絶命のピンチ!その時、「彼女から離れろ!」という勇敢な声が響き渡ります。声の主は、なんと、さっきマフェットお嬢ちゃんが怖がって逃げ出した、あのクモだったのです!
英語学習のポイント
この絵本は、200年以上前から歌い継がれてきたマザーグースが元になっているだけあって、英語の「音」の美しさを存分に味わえるのが魅力です。
声に出して楽しい!ライミング(韻)の魔法
マザーグースの最大の特徴は、リズミカルな「ライミング(韻)」です。文の終わりで、似たような響きの言葉を繰り返すことで、歌うような心地よさが生まれます。
Little Miss Muffet, sat on a tuffet
A big wolf jumped out. He said with a shout
これをものすごくざっくりいうと、日本語のラップやダジャレのように、音の響きで遊んでいる感じです。
意味が分からなくても大丈夫。「マフェット、タフェット」「アウト、シャウト」。この音の響きを、ぜひ声に出して楽しんでみてください。英語って、なんだか音楽みたいで面白い!とお子さんが感じてくれるきっかけになるはずです。
Along came… – 物語が動き出す合言葉
Along came a spider(そこへクモがやってきて)というフレーズは、物語に新しい登場人物が現れる時の、お決まりの表現のようなものです。
これをものすごくざっくりいうと、「と、そこへ…」という、場面が転換する時の合図です。
ただ “A spider came.” と言うよりも、Along came… と言う方が、どこからともなくスルスル〜っと現れたような、情景が目に浮かぶ生き生きとした表現になります。昔ながらの物語によく出てくる、覚えておくとちょっぴり通っぽく聞こえるフレーズですよ。
例文:
“The princess was crying, and along came a handsome prince.”(お姫様が泣いていると、そこへハンサムな王子様がやってきました。)
“We were having a picnic, and along came a big, friendly dog.”(私たちがピクニックをしていると、そこへ人懐っこい大きな犬がやってきました。)
読み聞かせ動画のご紹介
日本語訳
Little Miss Muffet,
小さなマフェットお嬢ちゃん
sat on a tuffet,
小さな丘に座り
eating her curds and whey.
ホエイチーズを食べていた。
Along came a spider, who dropped down beside her
クモが彼女のそばへ伝って落ちてきた
and frightened Miss Muffet away.
そしてマフェットお嬢ちゃんをびっくりさせました。
“Help!” cried Miss Muffet.
「たすけて!」叫んだマフェットお嬢ちゃん。
She ran from her tuffet and into the woods down below.
彼女は丘から下の森の中へ走った。
“Come back!” called the spider.
「戻ってきて!」とクモは呼んだ。
He rushed off to find her.
彼は彼女を見つけるために急いだ。
“I’m sorry for scaring you so.”
「あなたをそんなに怖がらせてすみません」
The little girl sighed.
少女はため息をついた。
“What a bad place to hide.”
「隠れるのになんと悪い場所だろう。」
“Now I’m lost! I’ll be stuck here all night.”
「迷ってしまった!私は一晩中ここで動けない」
Then she heard a deep growl
それから彼女は深いうなり声を聞いた
and an ear-splitting howl.
そして耳を裂く鳴き声。
They gave poor Miss Muffet a fright.
彼らはかわいそうなマフェットお嬢ちゃんに恐怖を与えた。
A big wolf jumped out.
大きなオオカミが飛び出した。
He said with a shout,
彼は叫びながら言った、
“It’s time for my dinner, my dear.”
「夕食の時間だ、お嬢ちゃん」
“I’ll have little girl pie!”
「私は、少女パイをとります!」
“Put her down!” came a cry.
「彼女を置いてください!」と、さけび声が聞こえました。
“Don’t worry – Seb Spider is here.”
「心配しないでください クモのセブはここにあります。」
The wolf gave a smile.
オオカミは微笑んだ。
“I do like your style.
「私はあなたのスタイルが好きです。
But what can you do against me?”
しかし、あなたは私に対して何をすることができますか? 」
“I’ll show you,” said Seb.
「見せてあげる」とセブ。
He spun a strong web and tied the bad wolf to a tree.
彼は強力なクモの糸を紡いで、悪いオオカミを木につなぎました。
Miss Muffat said, “Sab, what a wonderful web.
マフェットお嬢ちゃんは言いました。「セブ、何てすばらしいクモなの
Now let’s go!”
さあ行きましょう!」
So Seb showed her the way.
そしてセブは彼女に道を示しました。
Now she’s friends with Seb Spider.
今、彼女はクモのセブと友達です。
He hangs down beside her and spins for Miss Muffet all
day.
彼は彼女の横にぶら下がって、マフェットお嬢ちゃんの前で一日中回っています。
The original version of Little Miss Muffet first appeared in print over 200 years ago.
Little Miss Muffetのオリジナル版は、200年以上前に最初に登場しました。
Curd is thickened milk used to make cheese.
凝乳は、チーズを作るために使用される濃厚な牛乳です。
Whey is a watery liquid made when the milk is
thickened.
ホエーは牛乳が入っているときに作られる厚みのある水状液です。
最後に:『ごめんなさい』から始まる、最高の友情
というわけで、今回は新しい解釈が加えられた『Little Miss Muffet』をご紹介しました。
元のマザーグースでは、クモはただの「怖がらせ役」で、物語からすぐに退場してしまいます。でも、この絵本では、彼は勇気を持って「ごめんなさい」と謝り、さらにはマフェットお嬢ちゃんのピンチを救う、最高のヒーローとして描かれています。
この物語が教えてくれるのは、第一印象や見た目で、相手のことを決めつけないで、ということ。そして、もし間違ってしまったら、素直に謝ることの大切さです。
ちょっぴり怖そうに見えたクモが、実はとても優しくて、頼りになる存在だった。そのことに気づけたから、マフェットお嬢ちゃんは、最高の友達を手に入れることができたんですよね。
最初は怖くて逃げ出してしまった相手とも、ほんの少しの勇気とコミュニケーションがあれば、かけがえのない関係を築けるかもしれない。そんな温かい希望をくれる、素敵な一冊でした。