こんにちは!
言葉って、時々面白いいたずらを仕掛けてくると思いませんか。
先日、公園のそばを歩いていたら、少年野球チームの元気な声が聞こえてきました。
「フライ!フライ!しっかり捕ってー!」
カキーンという音と共に、白いボールが高く空に舞い上がっていきます。
それを見ながら、僕の頭の中ではなぜか「あぁ、今夜はアジフライが食べたいな…」なんて、食いしん坊な考えが浮かんでいました。
空を「飛ぶ」ボールと、油で「揚げる」料理。
どちらも同じ「フライ」という言葉を使っています。
さらに言えば、旅行の計画を立てる時には、飛行機の「フライト」という言葉も使いますよね。
この3つの「フライ(ト)」、一体どういう関係なのでしょうか。今日はこの、音は同じなのに意味が違う言葉たちの、面白い関係性を紐解いてみたいと思います。
「半分は仲間で、半分は他人」という不思議な関係
「きっと、たまたま日本語にしたら同じ音になっただけで、もともとは全然違う言葉なんでしょ?」
はい、その通り!…と、言いたいところなのですが、実は「半分は正解で、半分はもっと深い話がある」というのが答えなんです。なんだか、ちょっと意地悪な言い方ですみません。
実はこの言葉たち、もとをたどると、英語のflyとfryという、非常によく似た、でも全く違う2つの単語に行き着きます。
この小さな違いが、今回の謎を解く大きな鍵なんです。
「空を飛ぶ」から来た、野球のフライとフライト
まずは、野球の「フライ」と飛行機の「フライト」から見ていきましょう。
この二つは、何を隠そう、正真正銘の「仲間」です。
どちらも、英語の動詞 fly(フライ)、つまり「飛ぶ」という言葉から来ています。
野球で高く打ち上げられたボールは、まるで鳥のように空を「飛んで」いきますよね。
だから、そのボールのことを「フライボール(fly ball)」、略して「フライ」と呼ぶのです。これはとても分かりやすいですね。
そして、飛行機の「フライト(flight)」は、このflyの名詞形です。
つまり、「飛ぶこと」そのものを指す言葉なんですね。だから「快適な空の旅(フライト)を」なんて言い方をするわけです。
というわけで、野球のフライと飛行機のフライトは、英語のflyを語源に持つ「空飛ぶ仲間」だったんですね。
じゃあ、エビフライの「フライ」は?
さて、ここからが本題です。
では、私たちの食欲をそそる、エビフライやアジフライの「フライ」は一体どこから来たのでしょうか。
もうお気づきかもしれませんが、こちらはfly(飛ぶ)とは全く関係がありません。
料理の「フライ」は、英語の動詞 fry(フライ)、つまり「(油で)揚げる、炒める」という言葉がもとになっています。
エビを揚げたものだから、fried shrimp。これが日本では「エビフライ」としてお馴染みになりました。
英語のflyとfry。
発音はとてもよく似ていますが、その語源は全くの別物です。flyがゲルマン語系の古い言葉なのに対して、fryはラテン語系のフランス語から来ています。
つまり、もともとは赤の他人だった二つの言葉が、たまたま似たような音を持っていた。そして、その二つが日本に入ってきた時に、カタカナではどちらも「フライ」と書かれてしまった。これが、今回の面白い勘違いの正体だったのです。
【コラム】もう混同しない!flyとfryの発音と覚え方のコツ
カタカナでは同じ「フライ」ですが、英語ではlとrの音で、全く違う単語として区別されます。
ここが、多くの日本人にとってちょっぴり難しいポイントですよね。でも、コツさえ掴めば大丈夫。
【発音のポイント】
- fly (飛ぶ) の “l” の音:
舌先に意識を集中させてみてください。舌の先を、上の歯の付け根あたりに「ピッタリ」とくっつけて、「フライ」と言ってみましょう。「ラ」と「リ」の中間のような、明るくクリアな音が出れば成功です。
- fry (揚げる) の “r” の音:
こちらは逆に、舌を口の中のどこにも「つけない」のがポイントです。少し口をすぼめて「ウ」の形を作り、舌を奥に丸めるようなイメージで「フライ」と言ってみましょう。少しこもったような、唸るような音が出ればバッチリです。
【イメージで覚えるコツ】
理屈は分かっても、とっさにどっちがどっちか分からなくなりますよね。そんな時は、イメージで覚えてしまうのがおすすめです。
- fly (飛ぶ) の覚え方:
lの音を出す時、舌が上の歯から離れていく様子を、飛行機が滑走路から「離陸 (Lift off)」するイメージと結びつけてみましょう。軽やかに空へ飛び立つflyです。
- fry (揚げる) の覚え方:
rの音を出す時の「ウ〜」という唸るような音が、まるで油がジュージューと音を立てて食材を「揚げる (fry)」音に聞こえませんか?美味しそうな音のfryです。
このイメージがあれば、もう混同することもないかもしれませんね。
最後に:言葉の面白い「空耳アワー」
野球のフライと飛行機のフライトは「飛ぶ(fly)」を語源とする「空飛ぶ仲間」でしたが、揚げ物のフライは「揚げる(fry)」が語源であり、全くの別物だったのです。
日本語というフィルターを通すことで、もともとは他人だった言葉が、まるで親戚のように聞こえてしまう。なんだか、言葉の「空耳アワー」みたいで面白いですよね。
普段、当たり前のように使っているカタカナ語も、そのルーツをそっと覗いてみると、こんな風に意外な発見がたくさん隠されています。
いつもの言葉が、少しだけ違って、もっと面白く見えてくるかもしれませんね。