木は緑。りんごは赤。
美術の時間なら、それが「正しい色」なのでしょうか。
『Willow』に登場するWillowが描くのは、ピンクの木に青いりんご。
先生のMiss Hawthorneは、そんな絵をなかなか認めてくれません。
教室はいつもきちんと整えられ、鉛筆も絵の具も決められた場所へ。子どもたちも先生の見本どおりに絵を描きます。
でも、Willowだけは違いました。
目を閉じて、自分に見えたものを描く。
「木は緑じゃなきゃいけないの?」
そんなふうに考えてみると、Willowが見ている世界を少しのぞいてみたくなるかもしれませんね。
Willowの自由な想像力と、大切にしている一冊のアートブック。それがやがて、冷たかった先生と教室を少しずつ変えていきます。
絵本の基本情報
| タイトル | Willow |
|---|---|
| 主なテーマ | 想像力・アート・自分らしい表現・やさしさ |
『Willow』ってどんな絵本?
物語の舞台は、Miss Hawthorneの美術教室です。
明るい日でさえ、そこは冷たく暗い場所。
画材はきっちり片づけられ、折れたクレヨンは一本もありません。子どもたちは静かに列になって座っています。
そんな中で、ひとりだけ少し違うのがWillow。
窓の外を眺めたり、クレヨンを折ったり、先生とは違う色で絵を描いたりします。
9月の課題は「木」。
先生の見本は、まっすぐな茶色の幹と丸い緑の葉っぱでした。
ところがWillowが描いたのは、ピンク色の木。
10月には、今度はりんごの木を描きます。
みんなが赤いりんごを描く中、Willowのりんごは青色でした。
「そんな色の木やりんごはない」と言われても、Willowにはちゃんと理由があります。
「目を閉じたとき、そう見えたの」
現実をそのまま写すのではなく、自分の中に見えるものを描く。
そこがWillowらしさなんですね。
先生と違う絵を描いても、Willowは自分の見え方をあきらめません。正しさを争うのではなく、「私にはこう見えるよ」と自然に表現し続けるところが、この物語の魅力です。
あらすじ|先生の「正しい絵」とWillowの「見えた絵」
Miss Hawthorneは、子どもたちに見本と同じように描くことを求めます。
木なら茶色と緑。
りんごなら赤。
ほかの子どもたちは、そのとおりに描いていきます。
Willow以外は。
Willowがピンクの木を描くと、先生は「ピンクの木なんて誰が聞いたことがあるの?」と不機嫌な顔。
それでもWillowは、次の週に自分が大切にしているアートブックを学校へ持ってきます。
そこには、有名な画家が描いたフラミンゴのようにピンク色の木がありました。
青いりんごを否定されたときも同じです。
Willowは青いりんごが描かれた作品を先生に見せ、さらに自分で用意した青いりんごまでプレゼントします。
それでもMiss Hawthorneの態度は、なかなか変わりません。
Willowは相変わらず授業中に注意されてばかりです。
そして冬休み前。
子どもたちは先生へプレゼントを持ってきますが、Miss Hawthorneに贈り物をしたのはWillowだけでした。
包みの中に入っていたのは、Willowが何度も学校へ持ってきていた大切なアートブック。
その夜、ひとりで教室に残ったMiss Hawthorneは、本を手にしたまま長い時間を過ごします。
やがて、鍵をかけてしまっていた画材を取り出しました。
白い紙を前にして、色鉛筆を一本。
そして、生まれて初めて自由に線を描き始めます。
Willowは先生と戦わない
この物語で心に残るのは、WillowがMiss Hawthorneを言い負かそうとしないところです。
「先生が間違っている」と反発するわけでもありません。
ピンクの木を描いたら、自分の好きなアートブックを見せる。
青いりんごを描いたら、先生にも青いりんごをプレゼントする。
そして最後には、自分が大切にしていたアートブックそのものを贈ります。
Willowがしているのは、自分の好きなものを相手にも分けているだけ。
「先生にも、こんな世界を見てもらえたらいいな」
そんな気持ちだったのかもしれません。
Willowは自分らしさを守りながらも、先生を敵にしません。「私はこう見えるよ」「こんな世界もあるよ」と、自分の好きなものを何度も差し出します。そのやさしさが、時間をかけてMiss Hawthorneの中にあったものを動かしていくように見えます。
変わったのはWillowではなく、教室だった
冬休みが終わり、子どもたちは学校へ戻ってきます。
最初は、いつもと同じように見えました。
Except the art room.
「いつもと同じ。美術室以外は」
物語の最初では、Willowだけがほかの子どもたちと違う存在でした。
ところが最後には、違っているのがWillowではなく教室のほうになっています。
教室では、頭から足まで絵の具だらけになったMiss Hawthorneが、大きなwillow treeを描いていました。
そして子どもたちに声をかけます。
今度は、先生の見本どおりに描く必要はありません。
みんなが、自分の好きなように描きます。
もちろん、Willowも。
この絵本で注目したい英語
That’s what I saw when I closed my eyes.|私にはそう見えたの
Willowが、自分の絵について説明するときに繰り返す言葉です。
That’s what … は「それが〜したもの」「それが〜だったもの」といった形で使われます。
ここでは、先生に正解を説明しているのではなく、Willow自身が見た世界を伝えています。ピンクの木でも青いりんごでも同じ言葉を使うところが印象的。想像力という、この絵本のテーマにつながる一文ですね。
except|「〜以外」が物語の変化を見せる
except は「〜を除いて」「〜以外」という意味です。
前半では、先生と同じように描かないWillowを「みんなとは違う存在」として見せています。
ところが物語の最後には、こんな使われ方をします。
最初は「Willowだけが違う」。最後は「美術室だけが違う」。同じ except が、物語の前半と後半で違う役割を持っています。英語そのものが教室の変化を見せているのがおもしろいところです。
for the first time|先生にとっての「初めて」
for the first time は「初めて」。
doodle は、自由に線を描いたり、何気なく落書きをしたりすることです。
いつも見本どおりに描くことを求めてきた先生が、生まれて初めて白い紙に自由に線を描きます。短い一文ですが、Miss Hawthorneが変わり始める大切な場面です。
親子で話したい「正しい絵ってなんだろう?」
木を緑に描くのは間違いではありません。
ピンクに描くのも間違いではない。
子どもの絵を見ていると、大人のほうが「木は緑だよ」「りんごは赤だよ」と先に答えを教えてしまうこともありますよね。
『Willow』を読んだあとなら、ちょっと待って「どうしてこの色にしたの?」と聞いてみたくなるかもしれません。
たとえば、
- 木を好きな色で描くなら何色にする?
- 青いりんごがあったら、どんな味だと思う?
- 目を閉じたら、どんな木が見える?
そんな話から、思いがけない答えが返ってくるかもしれませんね。
「上手に描けた?」ではなく、「自分にはどう見える?」。
この絵本を読んだあとなら、いつものお絵描きも少し違って見えてきそうです。
『Willow』の読み聞かせ動画
物語は9月から始まり、10月、秋、冬休み、そして1月へと進みます。
WillowとMiss Hawthorneの表情や、少しずつ変わっていく教室の雰囲気にも注目しながら聞いてみてください。
英語を全部聞き取ろうとしなくても大丈夫。
Willow、pink tree、blue apple など、知っている言葉を探しながら楽しむだけでも十分です。
想像することを楽しみたくなる英語絵本
最初のMiss Hawthorneの教室には、「こう描く」という正解がありました。
でもWillowは、自分に見えた世界を描き続けます。
ピンクの木。
青いりんご。
そして、大切なアートブック。
Willowが先生に渡したものは、絵の描き方ではなく、「こんな見方もあるよ」という小さなきっかけだったのかもしれません。
最初は冷たく感じたMiss Hawthorneも、最後には子どもたちと一緒に絵の具まみれ。
その変化を見ると、Willowのアートブックが、先生の中に眠っていた何かをそっと起こしたようにも見えます。
自由に描くことが好きな子はもちろん、「上手に描かなきゃ」と手が止まってしまう子にも、そっと渡してみたくなる一冊ですね。