公園のすべり台の前で、ほかの子たちが勢いよく滑り降りるのをじっと見つめたまま、一歩も動けずにいる我が子の小さな背中。そんな姿を見て、「もっと活発に遊べばいいのに」「どうしてこんなに怖がりなんだろう」と、つい焦る気持ちを抱いたことはないでしょうか。
周りの子がどんどん新しいことに飛び込んでいく中で、石橋を叩いても渡らないタイプの我が子を見ていると、親としては将来が少し心配になってしまうこともありますね。しかし、その慎重さは裏を返せば、周囲をよく観察し、危険を予測できる大切な力でもあります。
英語絵本『Until I Tried』は、そんな「いつも一歩引いて考えてしまう」子どもたちと、それを見守る親の心にそっと寄り添ってくれる作品です。動き出すまでに時間がかかるワニのコーディと、考える前に行動するカバのハティの二人が織りなす、おかしくも愛おしい日常が描かれています。
ここでは、『Until I Tried』のあらすじのほか、英語学習のポイント、読み聞かせ動画などを掲載しています。
『Until I Tried』の基本情報
| タイトル | Until I Tried (Little Experts) |
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| 著者 | Julia Han |
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| イラスト | Mai Ngo, Kübra Gültepe |
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| 出版社 | Little Expert Press |
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| 対象年齢(目安) | 3〜6歳 |
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あらすじ
カバのハティとワニのコーディは大親友。新しい挑戦が大好きなハティに対し、コーディは「もし滑ったら?」「もし尖っていたら?」と、何をするにも最悪の事態を何十分も想像し続けてしまう慎重な性格です。ハティが勢いよく岩から飛び降りる横で、コーディは風向きを調べたり角度を計算したりすることに忙しく、なかなか一歩を踏み出せません。
それでもハティはコーディを置いてきぼりにせず、ベリーを食べてベタベタになった面白い顔を見せながら、コーディが自分のペースで一口かじるのを待ってくれます。コーディは自分が臆病だと感じていましたが、ハティは「コーディの鋭い目は、いつも私を見守るために使われているんだよ」と、彼の慎重さをそっと肯定してくれるのです。
ある朝、カエル追いをして遊んでいると、ハティが泥沼に足をとられて動けなくなってしまいました。コーディの頭には瞬時に47通りの最悪なシナリオが浮かびますが、怖がる親友の姿を見た瞬間、計画を立てるよりも先に足が動きます。コーディが全身の力でハティを引き抜いたとき、二人は静かな星空の下で、新しい気づきを共有することになります。
英語学習のポイント
① 「もし〜だったらどうする?」と心配するときの “What if…?” 構文
コーディが新しい挑戦を前にして、頭の中でたくさんの心配事を巡らせるときに繰り返す定番のフレーズです。仮定の質問や、不安を口にするときに日常会話でもよく使われます。
- What if …? → もし〜だったらどうする? / もし〜ならどうなる?
- “Wait, what if it’s slippery?” → 待って、もし滑りやすかったらどうする?
- “What if rocks secretly hate crocodiles?” → もし岩が密かにワニを嫌っていたらどうする?
- “What if we miss the bus?” → もしバスに乗り遅れたらどうしよう?
② “I didn’t know I had it in me until I tried.” 〜「やってみるまで知らなかった」
物語のキーとなる表現です。”have it in me”(自分の中にその資質や力がある)という表現を使い、行動してみて初めて自分の内に秘めた力に気づいた様子を表しています。
- have it in one → (能力や資質を)内に秘めている、いざとなればできる
- “I didn’t know I had it in me until I tried.” → やってみるまで、自分の中にそれ(勇気)があるなんて知らなかったよ。
- “I didn’t know I had it in me to write a book.” → 本を書く力が自分にあるなんて、挑戦するまで知らなかった。
③ “Turns out…” 〜「結局〜だとわかる / 実は〜だった」
予想していたことと異なる事実や、後から分かった状況をシンプルに説明するときに便利な口語表現です。主語の “It” が省略されてカジュアルに使われます。
- Turns out … → 結局〜だとわかる、実は〜だった
- “Turns out imagination is louder than gravity.” → 想像力は重力よりも騒がしいみたいです。
- “Turns out the test was pretty easy.” → 結局のところ、テストはかなり簡単だったとわかったよ。
読み聞かせ動画のご紹介
日本語訳(全文)
Hattie Hippo and Cody Crocodile were the best of friends.
カバのハティとワニのコーディは大親友でした。
Hattie loved trying new things.
ハティは新しいことに挑戦するのが大好きでした。
Cody loved thinking about trying new things, sometimes for a very long time.
コーディは新しいことに挑戦することについて考えるのが大好きでしたが、時にはとても長い時間をかけることもありました。
“Let’s jump off that rock.”
「あの岩から飛び降りようよ。」
“Wait, what if it’s slippery? What if it’s sharp?”
「待って、滑りやすかったらどうする? 尖っていたらどうする?」
“What if rocks secretly hate crocodiles?”
「もし岩が密かにワニを嫌っていたらどうする?」
“I don’t know. What if it’s fun?”
「さあ、どうだろう。もし楽しかったらどうする?」
The rock just sat there, not hating anyone.
岩はただそこに佇んでいるだけで、誰も嫌ってはいませんでした。
Whoosh! Hattie jumped.
ヒューストン! ハティは飛び降りました。
She did not triple check the wind direction.
彼女は風向きを三重にチェックすることもしませんでした。
She did not calculate rock angles.
岩の角度を計算することもしませんでした。
She simply jumped. “Yay!”
ただシンプルに飛び降りたのです。「イェーイ!」
Cody fell dramatically.
コーディは劇的に倒れ込みました。
“Oh no, this is the end. Tell my tale, I loved it.”
「あぁ、もうおしまいだ。僕の物語を伝えておくれ、楽しかったよ。」
“Wait, what?”
「待って、何だって?」
He opened one eye. Grass, flowers, butterflies.
彼は片目を開けました。草、花、蝶々。
No dramatic ending. “Oh,”
劇的な結末などありません。「あぁ、」
Turns out imagination is louder than gravity.
想像力は重力よりも騒がしいみたいです。
“See, I told you it’s fun.”
「ほら、楽しいって言ったでしょ。」
“Wow.”
「ワオ。」
“Let’s try these berries.”
「このベリーを食べてみよう。」
“What if they’re sticky?”
「ベタベタしていたらどうする?」
“Then I’ll make a silly face.”
「そしたら変な顔をするよ。」
“They are sticky. See? That’s how fun starts,”
「本当にベタベタだね。ほらね? そうやって楽しさは始まるのよ」と、
Hattie said happily.
ハティは嬉しそうに言いました。
She made a silly face with purple juice on her nose.
彼女は鼻に紫色のジュースをつけたまま、変な顔をしました。
Cody stared. Then took a bite.
コーディは凝視したあと、一口かじりました。
“…okay, but that’s delicious.”
「…わかった、でもこれ、美味しいね。」
Sticky can still be fun.
ベタベタでも楽しいことはあるのです。
“Yum.”
「美味しい。」
Every day, Hattie went first.
毎日、ハティが先に行きました。
Boom. And Cody watched from behind.
ドカン。そしてコーディは後ろから見守っていました。
One morning, Hattie shouted, “Cody, look!”
ある朝、ハティが「コーディ、見て!」と叫びました。
Hattie found a glowing fruit. Cody did not.
ハティは光る果物を見つけました。コーディは見つけられませんでした。
He had sharp eyes. Very sharp eyes.
彼は鋭い目を持っていました。非常に鋭い目です。
Extremely sharp.
極めて鋭い。
(He was told this many times.)
(彼は何度もそう言われていました。)
“Maybe they’re not that sharp,” he muttered.
「それほど鋭くもないのかもしれないな」と彼は呟きました。
“How come I didn’t see that? I thought I had sharp eyes.”
「どうして見えなかったんだろう? 自分は鋭い目を持っていると思っていたのに。」
Hattie nudged him.
ハティは彼を軽く小突きました。
“You do have sharp eyes. You use them to look after me.”
「あなた、本当に鋭い目を持っているわよ。それを私を見守るために使っているの。」
Cody blinked again.
コーディはまた瞬きをしました。
“That did require teeth.”
「それには確かに歯が必要だったね。」
“And your teeth? You pulled the thorn from my toe.”
「あなたの歯は? 私の足の指から棘を抜いてくれたじゃない。」
I found the fruit, but I was brave because you were there.
私は果物を見つけたけれど、あなたがそこにいてくれたから勇敢になれたのよ。
Maybe bravery doesn’t always look like jumping.
勇敢さっていうのは、いつもジャンプすることばかりじゃないのかもしれない。
Sometimes it looks like staying.
時には、ただそこに留まることのように見えることもある。
Under the stars, the two friends shared a sweet, quiet moment.
星空の下で、二人の友達は甘く静かな時間を共有しました。
The next morning, as the sun slowly rose, Hattie and Cody woke up early.
翌朝、太陽がゆっくりと昇る頃、ハティとコーディは早起きをしました。
They started their day with a little game called frog chasing.
二人はカエル追いという小さなゲームで一日を始めました。
As usual, Hattie went first and Cody just carefully ran after her.
いつものようにハティが先に行き、コーディはただ慎重に彼女の後を走って追いかけました。
Then… Hattie stepped into the mud and sank. Squelch.
その時…ハティが泥に足を踏み入れて沈んでしまいました。グチャ。
“Cody, I am becoming one with the swamp.” Cody froze.
「コーディ、私、沼と一体化しつつあるわ。」コーディは固まりました。
His brain began listing 47 possible disasters.
彼の脳は47個の起こりうる災害をリストアップし始めました。
Then it stopped because Hattie looked scared.
しかし、ハティが怖がっているように見えたので、それは止まりました。
“Cody, I’m stuck.”
「コーディ、動けないの。」
He ran, not because he was fearless, but because she needed him more than she needed a plan.
彼は走りました。恐れを知らないからではなく、彼女が計画よりも彼を必要としていたからです。
He grabbed her leg gently with his teeth and pulled with all his strength.
彼は彼女の脚を歯で優しくくわえ、全身の力で引っ張りました。
Pop!
ポンッ!
Hattie flew out and landed safely.
ハティは飛び出して、無事に着地しました。
“You saved me.”
「あなたが助けてくれたのね。」
“I did.”
「僕がやったんだ。」
“Yes.”
「そうよ。」
“Huh.”
「へえ。」
Sometimes courage surprises the person using it.
時に勇気は、それを使う本人さえも驚かせることがあります。
That night under the quiet stars, Cody looked up and whispered,
その夜、静かな星空の下でコーディは見上げて呟きました。
“I didn’t know I had it in me until I tried. For you.”
「やってみるまで、自分の中にそれがあるなんて知らなかったよ。君のためだからね。」
Hattie smiled.
ハティは微笑みました。
She didn’t say anything dramatic.
劇的なことは何も言いませんでした。
She just scooted closer.
ただ、もっと近くに身を寄せました。
And somehow it was perfect.
そして、どういうわけか、それは完璧でした。
The end.
おしまい。
まとめ
石橋を叩きすぎて渡れなくなってしまう我が子に、私たちは「もっと勇気を出して!」と言ってしまいがちです。けれどこの絵本を読むと、飛び降りるような派手な勇気だけが全てではないと気づかされます。
いつも後ろから見守ること。相手の靴の泥汚れや小さなトゲに気づくこと。そうした優しさと慎重さの延長線上に、誰かを本当に助けたいと思ったときにだけ現れる「静かな勇気」があるのかもしれません。
「やりたいけど、怖い」。そんな葛藤を抱える子どもと一緒にこの絵本を開き、「コーディの気持ち、わかる?」と語り合ってみるのもよさそうです。読み終わったあと、いつものお散歩道が少しだけ優しく見える、そんな余白を残してくれる温かい一冊です。