英語の本を、一冊読み切ってみたい。
そう思って洋書を開いたものの、文字ばかりのページを前にして「これはまだちょっと早かったかな」と閉じてしまったことはないでしょうか。
そんなときに、ちょうどよさそうなのが『The Emperor’s New Clothes』。
日本でもおなじみの「裸の王様」です。
今回紹介するのはYoung Reading Series 1の一冊。ひとり読みを始めた子ども向けのシリーズで、ページにはしっかり英文がありますが、Mike Gordonのコミカルな挿絵もたっぷり入っています。
絵本よりは、ちゃんと「読む」。
でも、普通の洋書ほど文字だけではない。
しかも、物語の筋はもう知っている。
この組み合わせが、「英語の本を一冊読み切ってみたい」という最初の一冊にはなかなか良いんです。
子どもの多読だけでなく、大人のやり直し英語にも。知らない物語を英語だけで追うより、ずっと入りやすいと思います。
絵本から洋書へ、ちょうど間くらいの一冊
| タイトル | The Emperor’s New Clothes |
|---|---|
| 日本語タイトル | 裸の王様 |
| シリーズ | Young Reading Series 1 |
| 原作 | Hans Christian Andersen |
| イラスト | Mike Gordon |
| 特徴 | ひとり読みを始めた子ども向けの、挿絵が豊富な英語の読み物 |
物語の主人公は、とにかく服が大好きな皇帝。
兵士が敵の襲来を知らせに来ても、皇帝が気にしているのは新しいベスト。芝居にも興味はなく、公園へ馬で出かけるのも、新しい服をみんなに見せたいからです。
「でも、全部前に着たことがある。」
ところが、すでに持っている服は7,322着。
それでも皇帝は、何年たってもみんなが話題にするくらい、ものすごい格好がしたいと言い出します。
このあたりから、もうかなり可笑しい。
昔話として知っている「見栄っ張りな王様」が、会話のある英語になることで、ぐっとキャラクターらしく見えてきます。
そして現れるのが、SlimusとSlickという二人組。
自分たちの服は「賢い人にしか見えない」と皇帝に話します。
さらに、仕事ができない人にも見えないのだとか。
この設定を知っているからこそ、少しくらい知らない単語が出ても、話そのものは見失いません。
ここが、昔話を英語で読む強みですね。
英文も「一文読んだら全部辞書を引かないと進めない」というほどではありません。
分かるところをつなぎながら、「ああ、今あの場面だ」と読み進められます。
ちょっと引っかかる英語だけ拾ってみよう
全部の単語を覚えようとすると、一冊読むことより「知らない単語探し」が主役になってしまいます。
この本なら、物語を追うのに必要なところだけ、少し立ち止まるくらいで十分。
show off — 自慢して見せる、見せびらかす
show off は、ただ「見せる」というより、少し自慢するように「見せびらかす」という感じがあります。
この場面では、皇帝が新しい服をみんなに見てもらうために公園へ出かけます。服が大好きで、注目されることも大好き。そんな皇帝らしさがよく出ている表現です。
もうひとつ、ちょっと目が止まるのがsplendiferous。
splendiferous は、とても華やかで立派な様子を大げさに表す言葉です。
ここでは細かな訳語を覚えるより、「皇帝がとにかく大げさなくらい立派な格好をしたがっている」とつかめれば十分。キャラクターと一緒に読むと、珍しい単語も意味を想像しやすくなります。
そして物語の核心に近づくと、Borisが何もない織機を前にして焦ります。
I can’t see a thing. — 何も見えない
I can’t see a thing. は、この場合「何も見えない」という意味。
否定文の中の a thing は、「何ひとつ〜ない」という意味で使われます。Borisは服が見えないことで、自分が愚かだと思われ、仕事まで失うのではないかと焦っています。
そして皇帝自身も、同じ罠にはまります。
“I’m not worthy of being emperor.”
何も見えない。自分には皇帝になる資格がないんだ。
それでも口では、
「素晴らしい。」
と言ってしまいます。
難しい英文を攻略するというより、「知っている場面を英語ではどう言っているのか」を見る。この読み方なら、分からない単語が少し残っていても先へ進めます。一冊読み切ることを優先するなら、全部を辞書で確認しなくても大丈夫です。
読み聞かせ動画は「耳で答え合わせ」に
今回の本には、読み聞かせ動画もあります。
『The Emperor’s New Clothes』の読み聞かせ動画を見る
自分で少し読んでから聞いてみると、「ここはこんなリズムで読むんだ」「この会話、こういう調子なんだ」と気づけるところがあります。
特にこの作品は、皇帝、Boris、Slimus、Slickなど会話する人物が多め。
文章だけで追うより、声が加わることで場面の可笑しさが伝わりやすいところもあります。
読み聞かせ動画の中には、本文そのものとは別に、話者が聞き手へ問いかけたり、言葉を補足したりする部分もあります。
なので、動画の音声すべてを絵本本文だと思わなくて大丈夫。
まず本を読む。
ちょっと読みづらかったところを動画で聞く。
また本へ戻る。
そんな使い方もできます。
一冊を最初から最後まで完璧に聞き取る必要もありません。
自分で読めたところが、声でも分かった。
それだけでも結構うれしいものです。
「一冊読めた」が次の洋書につながる
この本を最後まで読むころには、最初に感じた文字量への抵抗も、少し薄くなっているかもしれません。
クライマックスでは、街の人たちも「賢い人にしか服が見えない」という話を知っているので、
“Such a magnificent pattern.”
と、見えているふりをします。
そこへ、子どもの一言。
そして父親も、
と認めます。
知っている場面まで英語でたどり着くと、「あ、本当に一冊読めた。」という感じがちゃんとあります。
英語多読というと、たくさん読まなければいけないように感じるかもしれません。
でも最初は、一冊でいい。
しかも、分からない単語が少しくらい残っていても構いません。
筋を追えた。
登場人物の会話が分かった。
最後までページをめくれた。
それなら、もう十分「読んだ」と言っていいと思います。
『The Emperor’s New Clothes』は、絵本から少し長い英語の読み物へ進みたい子にも、「いつか洋書を一冊読んでみたい」と思っている大人にも、ちょうど間に置ける一冊。
次に文字の多い英語の本を手に取るとき、最初のページを開くハードルが少し下がっている。
この本のいちばんいいところは、そこなのかもしれません。