勝つのはうれしいし、誰かにほめられたら、もっと頑張りたくなりますよね。
でも、いつも一番でいたいと思っていたら、初めて負けたときはどうなるんでしょう?
『The Big Cheese』の主人公は、何でも一番が大好きなチーズ。自分がどれほどすごいか、みんなに聞かせることにも余念がありません。
そんな彼の前に、ある日、静かで目立たないライバルが現れます。
自信満々なチーズの語り口が、とにかく愉快な一冊。英語ならではのダジャレもたっぷりで、笑いながら読んでいるうちに、勝つこと以外の大切なものにも気づかされるお話です。
『The Big Cheese』のあらすじと見どころ
| 原題 | The Big Cheese |
|---|---|
| 作者 | Jory John |
| イラスト | Pete Oswald |
| シリーズ | The Food Group(第7作) |
| 出版社 | HarperCollins |
| 出版年 | 2023年 |
| ページ数 | 40ページ |
| 対象年齢の目安 | 4〜8歳 |
自分が一番!の自慢屋チーズ
主人公は、みんなから「The Big Cheese」と呼ばれる大きなチェダーチーズ。
何をやっても大活躍。スポーツでも人前で話すことでも、自分が一番だと信じて疑いません。
しかも、すごいのは実力だけじゃないんです。自分をほめるのも大得意!
みんなから歓声を浴びるのが大好きで、注目されればされるほどご機嫌になります。
ところが、町にウェッジという新しいチーズがやってきました。
大きな声で自慢する主人公とは正反対。静かで控えめなウェッジは、自分の実力をひけらかそうとしません。
そんな二人が顔を合わせるのが、毎年恒例のチーズ大会「Cheese-cathlon」。
これまで6年連続で優勝してきた主人公は、今年も当然、自分が勝つつもりです。
ところが、かけっこでウェッジに負けてしまいます。続くチェスでも、ほかの競技でも負け続け、ついには優勝を逃してしまいました。
負けたあとに見つけたもの
面白いのは、ウェッジが勝っても少しも自慢しないところ。
あれほど勝ちたいと思っていた主人公には、ちょっと不思議に映ったかもしれませんね。
でも、初めて負けたからこそ、気づけたこともありました。
誰かに勝たなくても、自分の世界が壊れてしまうわけじゃない。勝つことばかり気にして、参加する楽しさを忘れていたことにも気づいていきます。
そしてウェッジと話してみると、これまで知らなかった相手の一面が見えてきました。
「一番になること」と「自分のことを好きでいられること」は、必ずしも同じではないんですね。
負けた悔しさをなかったことにするのではなく、そこから少しずつ考え方が変わっていく。そんな主人公の姿が、この絵本のいいところです。
この絵本で注目したい英語
『The Big Cheese』には、チーズにちなんだ面白い英語がたくさん登場します。
特に知っておきたいのが、タイトルにもなっている言葉と、主人公の自慢たっぷりの表現。
大物を意味する「big cheese」
「みんなは僕をチーズと呼ぶ。ビッグ・チーズってね」
実は、英語の big cheese には「大物」「重要人物」「偉い人」という意味があるんです。
ただの大きなチーズではなく、「僕はすごいんだぞ!」という主人公の自信まで表しているんですね。
big cheese は、人について使うカジュアルな表現。会社や組織の有力者などを指すことがあります。
この絵本では、本物のチーズを主人公にすることで、言葉の意味をそのまま絵にしているところが面白いですね。
チーズを細かくする? 競争相手に勝つ?
「競争相手を圧倒したんだ」
shred は、細かく刻む、細く裂くという意味の動詞。
料理で shredded cheese といえば、細かく刻まれたチーズのことです。
一方、shred the competition は、競争相手を徹底的に打ち負かすという意味で使われます。
チーズの主人公が shred を使うと、料理でチーズを細かくする意味まで重なって、ちょっとしたダジャレになるんですね。
ほかにも、good をチーズの名前 Gouda に言い換える遊びが登場します。
意味が分かると、もう一度そのページを読んでみたくなる、面白い言葉遊びですね。
勝っても自慢しない「humble」
「彼はとても謙虚だった」
humble は「謙虚な」「控えめな」という意味。
ウェッジは、何度勝っても得意げになったり、相手を見下したりしません。
主人公の大げさな自慢ぶりを見てきたあとだからこそ、ウェッジの静かな態度が印象に残ります。
humble は、自分の能力や成功を必要以上に誇らない態度を表す言葉です。
この絵本では、主人公とウェッジの対照的な振る舞いを見ることで、その意味が自然に伝わってきます。
読み聞かせで楽しむ『The Big Cheese』
この絵本は、主人公の話し方にも注目したいところ。
冒頭から自分のことを大げさに紹介するだけでなく、聞いている人にも「一緒に言って!」と呼びかけてきます。
まるで舞台の上で自慢話を聞かされているような、にぎやかな始まりです。
親子で読むなら、主人公になりきって少し大げさに読んでみても楽しそうですね。
読み聞かせ動画はこちら
『The Big Cheese』の読み聞かせ動画を見る(YouTube)
自慢ばかりのチーズが、初めて負けたとき
物語の前半では、とにかく自信たっぷりだった主人公。
ところが、大会では思うように勝てません。
「僕は初めて2位になったんだ」
ずっと一番だった主人公にとって、2位は大事件!
それまでの自信満々な様子と、負けたときの反応を比べてみると、主人公の気持ちがよく見えてきます。
負けても、また立ち上がれる
何度も負けて落ち込んでいた主人公は、やがて少しずつ落ち着きを取り戻していきます。
「僕は立ち上がり、体についた汚れを払って、家へ向かった」
pick oneself up は、文字どおり立ち上がるという意味だけでなく、失敗や落ち込みから立ち直ることを表す場合もあります。
この場面では、実際に立ち上がる主人公の姿と、気持ちの変化が重なっているんですね。
悔しさは、そう簡単には消えないもの。でも、負けたあとも前に進めることを、主人公は少しずつ知っていきます。
親子で話してみたいこと
読み終わったら、主人公が最初に登場した場面と、最後の様子を見比べてみるのも面白そうです。
最初は、自分が一番だとみんなに認めてもらいたかったチーズ。
それが最後には、友達のすごいところを喜べるようになっています。
「負けたとき、どんな気持ちだったと思う?」
「ウェッジはどうして勝っても自慢しなかったのかな?」
正解を決めずに、親子で感じたことを話してみたいですね。
『The Big Cheese』は、勝ち負けについて考えるきっかけになるだけでなく、英語のユーモアもたっぷり楽しめる絵本。
何より、あの自慢屋チーズが少しずつ変わっていく様子が、なんとも愛おしい一冊です。