「明日は、おいしい朝ごはんが食べられる!」
そんな楽しみな気持ちで、おばあちゃんのお料理を手伝うタリア。
ところが翌朝、家族は誰も朝ごはんを食べようとしません。タリアには、いつものフルーツとシリアルだけ。
いったい、どういうことなのでしょう?
英語絵本『Talia and the Very Yum Kippur』は、ユダヤ教の祝日「ヨム・キプール」をめぐる、かわいらしい聞き間違いから始まるお話です。
食べ物のおいしさを楽しみにしていたタリアが、最後に見つけるのは、ちょっと違う「おいしい気持ち」。
英語ならではの言葉遊びとともに、物語をのぞいてみましょう。
絵本の基本情報
| 英語タイトル | Talia and the Very Yum Kippur |
|---|---|
| 作者 | Linda Elovitz Marshall |
| イラスト | Francesca Assirelli |
| 出版社 | Kar-Ben Publishing |
| 出版年 | 2015年 |
| ページ数 | 24ページ |
| 対象年齢の目安 | 3〜8歳 |
あらすじ|おいしいごちそうは、いつ食べられる?
秋の初め、タリアは大好きなおじいちゃんとおばあちゃんの農場へ遊びにやってきました。
農場には、おいしそうな匂いと食べ物がいっぱい。
おばあちゃんから、翌日のヨム・キプールに向けた食事の準備を手伝ってほしいと頼まれたタリアは、大喜びです。
鶏小屋から卵を集めたり、おじいちゃんと牛の乳搾りをしたり。集めた材料で、クーゲルという料理を作ります。
クッキーやケーキなども並んで、明日のごちそうが楽しみでたまりません。
ところが翌朝、タリアの前に出されたのは、いつもどおりの朝食。ほかの家族は何も食べず、礼拝に出かけてしまいました。
楽しみにしていたごちそうは、いったいどこへ?
おばあちゃんの説明を聞くうちに、タリアは自分が大きな勘違いをしていたことに気づきます。
そして、その日が終わるころには、食べ物とは別の大切なものも見つけるのです。
「Very Yum Kippur」ってどういう意味?
この絵本の面白さは、タイトルそのものに隠れています。
本当の祝日の名前はYom Kippur(ヨム・キプール)。
ところが、タリアにはYum Kippurと聞こえていました。
英語の Yum! は、おいしそうな食べ物を見たり食べたりしたときの「おいしい!」「うまそう!」という言葉。
つまりタリアは、祝日の名前を「とってもおいしい日」のように受け取っていたのです。
ヨム・キプールはどんな日?
ヨム・キプールは、ユダヤ教で「贖罪の日」と呼ばれる大切な祝日です。
断食や祈りを通して、自分の行いを振り返ったり、人との関係を見つめ直したりします。
絵本で家族が食事をせずに礼拝へ出かけるのも、そのため。
タリアがおいしい食べ物のことばかり考えている一方で、大人たちは一日を静かに過ごしているんですね。
この違いが、物語のおかしさにも、後半の温かさにもつながっていきます。
この絵本で注目したい英語
「速い」だけじゃない fast の意味
「今日は断食の日なのよ。」
fast と聞くと、まず「速い」を思い浮かべるかもしれません。
でも、fast には「断食する」という意味もあります。ここでは名詞の fast が使われていて、fast day は「断食の日」です。
タリアは、この fast を「速い」という意味で受け取ってしまいます。
みんなが朝ごはんを食べなかったのは、忙しくて時間がなかったから?
そんなふうに考えてしまうのが、子どもらしくて面白いところ。
同じつづりの言葉が、文脈によってまったく違う意味になる例です。
breakfast と break-fast の違い
「それに、朝ごはんじゃなくて、断食明けの食事なのよ。」
breakfast は、普段の「朝食」。
一方、break-fast は断食を終えて食べる食事のことです。
もともと breakfast も、「断食(fast)を終える(break)」という言葉の組み合わせに由来しています。
おばあちゃんが準備していたのは、朝の breakfast ではなく、断食が終わる夕方の break-fast。
音も見た目もよく似ているので、タリアが勘違いしてしまうのも無理はありません。
日本語に訳すだけでは伝わりにくい、英語ならではの言葉遊びですね。
謝る気持ちと、許しを求める言葉
「ランプを壊してごめんなさい。それから、嘘をついてごめんなさい。」
「許してくれる?」
I’m sorry I … は、自分がしたことを具体的に伝えて謝る表現。
forgive は「許す」という意味です。
タリアは、以前壊したランプを人形のせいにしていたことを正直に打ち明けます。
そして今度は、おばあちゃんも、あのときタリアを怒鳴ってしまったことを謝ります。
一方だけが謝って終わるのではなく、お互いに自分のしたことを振り返る場面。
ヨム・キプールがどんな日なのか、二人の会話からも伝わってきます。
物語を読みながら英語を見てみよう
おいしいクーゲルを作ろう
「まずはクーゲルを作りましょう。」
おばあちゃんが最初に作るのは、クーゲルという料理です。
タリアは鶏小屋で卵を集め、牛の乳搾りも手伝います。麺やレーズン、牛乳、卵などを混ぜ合わせて、オーブンへ。
お料理のお手伝いといっても、材料集めから始まるのが農場らしいところ。
タリアが材料をとても慎重に運ぶ様子も、なんだかかわいいですね。
なかなか終わらない「速い日」
「今日は、ゆっくりした日だと思うけど。」
家族が礼拝へ出かけたあと、家の中はとても静か。
タリアは本を読んだり、人形で遊んだり、動物たちと過ごしたりします。
木々の葉も、秋の色へと少しずつ変わっていました。
でも、ごちそうの時間はまだやってきません。
「速い日」だと聞いたのに、ちっとも速く進まない一日。
タリアには、むしろ slow day(ゆっくりした日)に感じられたのでしょう。
fast と slow の対比が、ここでも効いています。
食べ物ではない「おいしい気持ち」
やがてタリアは、ヨム・キプールが自分の行いを振り返り、悪かったことを謝る日だと知ります。
そこで思い出したのが、壊してしまったランプのこと。
本当は自分が壊したのに、人形のせいにしていたのです。
勇気を出して打ち明けるタリア。おばあちゃんも自分の言動を謝り、二人は抱き合います。
「それは、なんとも心地よい気持ちでした。」
ここで使われる delicious が、とても印象的です。
delicious は普通、食べ物の「おいしい」を表す言葉。でも、この場面では食べ物の話ではありません。
本当のことを話し、謝り、許し合えたときの、心が満たされるような感覚を表しているんですね。
ずっとごちそうのことを考えていたタリアが、別の意味での「おいしさ」に気づく場面です。
夕暮れになると、いよいよ断食明けの食事の時間。
タリアは食卓を整えるお手伝いをして、家族と一緒にごちそうを楽しみます。
おいしい料理と、すっきりした気持ち。
タリアにとって、本当に甘くて温かい一日になりました。
英語の読み聞かせ動画
『Talia and the Very Yum Kippur』の英語の読み聞かせはこちらから楽しめます。
読み聞かせでは、特に Yom と Yum、fast と slow、break-fast と breakfast の聞こえ方に注目してみてください。
意味が分かってからもう一度聞くと、タリアの勘違いがより面白く感じられそうです。
親子で楽しみたいポイント
この絵本には、普段なじみのない文化に触れる楽しさがあります。
最初は「どうしてみんな朝ごはんを食べないんだろう?」という疑問から入っても大丈夫。
タリアと一緒に不思議がりながら読むうちに、ヨム・キプールが大切にしていることが少しずつ見えてきます。
そして、もう一つ注目したいのが、ランプのことを正直に話す場面。
「タリアは、どうして今になって本当のことを話そうと思ったのかな?」
そんな話を親子でしてみてもよさそうです。
英語が全部分からなくても、タリアとおばあちゃんの気持ちを想像しながら楽しめる一冊です。
まとめ|本当の「Yum」を見つけたタリア
『Talia and the Very Yum Kippur』は、「おいしい日」という聞き間違いから始まる、ユーモアのある英語絵本です。
fast や break-fast のように、言葉の意味を知ると物語がさらに面白くなるのも、この作品ならでは。
そして最後には、食べ物のおいしさだけではなく、正直に謝り、許し合えたときの心地よさも描かれています。
知らない文化に出会うきっかけにもなるし、「ごめんね」や「許すよ」という気持ちを親子で話す時間にもつながりそうですね。