子どもにおうち英語を始めたいけれど、どの絵本なら興味を持ってくれるのか見当がつかない。本屋さんで英語絵本の棚を前に、親の私たちも「難しすぎて英語嫌いになったらどうしよう……」と、立ち尽くしてしまうことってありますよね。
最初の一歩に必要なのは、難しい構文ではなく、耳に残る心地よいリズムとシンプルな繰り返しです。世界中で愛され続けている『Mr. Happy』は、ハッピーなストーリーと短いフレーズで、多読初心者のお子さまでも無理なく読み進められる工夫が詰まっています。
ここでは、『Mr. Happy』のあらすじのほか、英語学習のポイント、読み聞かせ動画などを掲載しています。
『Mr. Happy』の基本情報
| タイトル | Mr. Happy(ハッピーくん) |
|---|---|
| 著者 | Roger Hargreaves |
| イラスト | Roger Hargreaves |
| 出版社 | Price Stern Sloan |
| 対象年齢(目安) | 3歳〜6歳(英語多読の初心者・導入期におすすめ) |
あらすじ
世界の反対側にある、誰もが笑顔で暮らす国「ハッピーランド」。そこでは人々だけでなく、動物や植物さえも幸せそうに微笑んで暮らしています。この国に住む黄色くて丸い「Mr. Happy(ハッピーさん)」は、ある日、森の中を散歩しているときに奇妙な黄色いドアを見つけます。
ドアを開けて細いらせん階段をずんずんと降りていくと、そこには赤いドアがありました。部屋の中に入ると、スツールに座っている「Mr. Miserable(みじめさん)」という、自分とそっくりだけど全く幸せそうにない人物と出会います。彼は「世界で一番みじめな人間だ」と話し、どうしたらハッピーになれるのか分からずにいました。
ハッピーさんは彼を自分のコテージに連れ帰り、一緒に過ごすことにします。ハッピーランドでの穏やかな暮らしの中で、みじめさんの口元は少しずつ変化し、やがてこれまでの人生で一度もしたことがなかった「あること」をするようになります。
英語学習のポイント
1. 感情を表すシンプルな形容詞
登場人物たちの特徴を表す形容詞は、子どもたちが最初に覚えるのにぴったりのシンプルな単語ばかりです。日常のやり取りの中でも使いやすい表現です。
- happy(幸せな、嬉しい)
- 例文1:Everybody who lives in Happyland is as happy as the day is long.(ハッピーランドに住む人は誰もが、一日中ずっと幸せに暮らしています。)
- 例文2:I am so happy to see you.(あなたに会えてとても嬉しいです。)
- miserable(みじめな、とても不幸な)
- 例文1:I’m the most miserable person in the world.(僕は世界でいちばんみじめな人間さ。)
- 例文2:Why do you look so miserable?(どうしてそんなにみじめそうな顔をしているの?)
2. 繰り返しの方向・移動表現
らせん階段を下りたり上ったりするシーンでは、同じ単語が繰り返し登場します。リズムが良く、感覚的に言葉のイメージを掴むことができます。
- round and round(ぐるぐると、回って)
- 例文1:The stairs wend round and round.(階段はぐるぐると回っていました。)
- up and up / down and down(どんどん上へ / どんどん下へ)
- 例文1:Up and up the winding staircase they went.(彼らはらせん階段をどんどん上っていきました。)
- 例文2:The temperature is going down and down.(気温がどんどん下がっています。)
3. 日常生活で使える親子の声かけフレーズ
ハッピーさんがみじめさんを連れ出すときのフレーズは、日頃の親子のお出かけや、子ども同士の遊びのなかでもすぐに使える表現です。
- Follow me(ついてきて)
- 例文1:Follow me, and they both set off.(「僕についてきて」と言い、二人は出発しました。)
- 例文2:Follow me to the kitchen.(キッチンまでついてきてね。)
- Don’t argue(つべこべ言わないの、議論しないで)
- 例文1:”Don’t argue,” said Mr. Happy.(「つべこべ言わずに」とミスター・ハッピーは言いました。)
- 例文2:Don’t argue with your sister.(妹と言い争いをしないでね。)
読み聞かせ動画
YouTubeには、聞き取りやすい英語で語られる読み聞かせ動画がたくさんあります。正しい発音やイントネーションに触れるために、ぜひ親子で一緒に視聴してみてください。
日本語訳(全文)
On the other side of the world, where the sun shines hotter than here, and where trees are a hundred feet tall, there is a country called Happyland.
ここよりも太陽が眩しく照りつけ、100フィートもの高い木々がそびえ立つ世界の反対側に、ハッピーランドと呼ばれる国があります。
As you might very well expect everybody who lives in Happyland is as happy as the day is long. Wherever you go you see smiling faces all round. It’s such a happy place that even the flowers seem to smile in Happyland.
ご想像の通り、ハッピーランドに住む人は誰もが、一日中ずっと幸せに暮らしています。どこへ行っても、見渡す限り笑顔ばかりです。ハッピーランドはとても幸せな場所なので、花さえも微笑んでいるように見えます。
And, as well as all the people being happy, all the animals in Happyland are happy as well.
そして、人々が幸せなだけでなく、ハッピーランドの動物たちもみんな同じように幸せです。
If you’ve never seen a mouse smile, or a cat, or a dog, or even a worm – go to Happyland!
ネズミや猫、犬、あるいはミミズの笑顔さえ見たことがないなら、ハッピーランドへ行ってみてください!
This is a story about someone who lived there who happened to be called Mr. Happy. Mr. Happy was fat and round, and happy!
これは、そこに住んでいた、偶然にもミスター・ハッピー(ハッピーさん)と呼ばれる人の物語です。ミスター・ハッピーは太っていて丸く、そして幸せでした!
He lived in a small cottage beside a lake at the foot of a mountain and close to a wood in Happyland.
彼はハッピーランドの山の麓、湖のそばで、森の近くにある小さなコテージに住んでいました。
One day, while Mr. Happy was out walking through the tall trees in those woods near his home, he came across something which was really rather extraordinary.
ある日、ミスター・ハッピーが家の近くの森にある高い木々の間を散歩していると、本当にかなり奇妙なものに出くわしました。
There in the trunk of one of the very tall trees was a door. Not a very large door, but nevertheless a door. Certainly a door! A small, narrow, yellow door. Definitely a door!
その非常に高い木の一つの幹に、ドアがあったのです。それほど大きなドアではありませんでしたが、それでも間違いなくドアでした。確かにドアです! 小さくて狭い、黄色いドアでした。絶対にドアです!
“I wonder who lives here?” thought Mr. Happy to himself, and he turned the handle of that small, narrow, yellow door. The door wasn’t locked and it swung open quite easily.
「ここに誰が住んでいるんだろう?」とミスター・ハッピーは心の中で思い、その小さくて狭い黄色いドアの取っ手を回しました。ドアには鍵がかかっておらず、かなり簡単にすっと開きました。
Just inside the small, narrow, yellow door was a small, narrow, winding staircase, leading downwards. Mr. Happy squeezed his rather large body through the rather thin doorway and began to walk down the stairs. The stairs wend round and round and down and down and round and down and down and round.
その小さくて狭い黄色いドアのすぐ内側には、下へと続く、小さくて狭いらせん階段がありました。ミスター・ハッピーは、そのかなり狭い出入り口に自分のかなり大きな体を押し込み、階段を降り始めました。階段はぐるぐると回りながら、どんどん下へ、回っては下へ、下へと続いていました。
Eventually, after a long time, Mr. Happy reached the bottom of the staircase. He looked around and saw, there in front of him, another small, narrow door. But this one was red.
やがて長い時間が経ち、ミスター・ハッピーは階段のいちばん下にたどり着きました。彼が辺りを見回すと、目の前にまた別の小さくて狭いドアが見えました。でも、今度のドアは赤色でした。
Mr. Happy knocked at the door. “Who’s there?” said a voice. A sad, squeaky sort of a voice. “Who’s there?”
ミスター・ハッピーはドアをノックしました。「誰だい?」と声がしました。悲しそうな、きしむような感じの声でした。「誰なんだい?」
Mr. Happy pushed open the red door slowly, and there, sitting on a stool, was somebody who looked exactly like Mr. Happy, except that he didn’t look happy at all. In fact he looked downright miserable.
ミスター・ハッピーがゆっくりと赤いドアを押し開けると、そこにはスツールに腰掛けた、ミスター・ハッピーにそっくりな人がいましたが、ちっとも幸せそうには見えませんでした。それどころか、彼は本当にみじめそうに見えました。
“Hello,” said Mr. Happy. “I’m Mr. Happy.” “Oh, are you indeed,” sniffed the person who looked like Mr. Happy but wasn’t. “Well, my name is Mr. Miserable, and I’m the most miserable person in the world.” “Why are you so miserable?” asked Mr. Happy. “Because I am,” replied Mr. Miserable.
「こんにちは」とミスター・ハッピーが言いました。「僕はミスター・ハッピーです」「へえ、本当にそうなのかい」と、ミスター・ハッピーに似ているけれどそうではないその人は、鼻をすすりながら言いました。「ふん、僕の名前はミスター・ミゼラブル(みじめさん)。世界でいちばんみじめな人間さ」「どうしてそんなにみじめなのですか?」とミスター・ハッピーが尋ねました。「みじめだからさ」とミスター・ミゼラブルが答えました。
“How would you like to be happy like me?” asked Mr. Happy. “I’d give anything to be happy,” said Mr. Miserable. “But I’m so miserable I don’t think I could ever be happy,” he added miserably. Mr. Happy made up his mind quickly. “Follow me,” he said. “Where to?” asked Mr. Miserable. “Don’t argue,” said Mr. Happy, and he went out through the small, narrow, red door.
「僕のように幸せになってみたくはありませんか?」とミスター・ハッピーが尋ねました。「幸せになれるなら何だって差し出すよ」とミスター・ミゼラブルが言いました。「でも、僕はあまりにもみじめだから、絶対に幸せにはなれないと思うんだ」と彼はみじめそうに付け加えました。ミスター・ハッピーはすぐに決心しました。「僕についてきてください」と彼は言いました。「どこへ?」とミスター・ミゼラブルが尋ねました。「つべこべ言わずに」とミスター・ハッピーは言い、小さくて狭い赤いドアを通って外へ出ました。
Mr. Miserable hesitated, and then followed. Up and up the winding staircase they went. Up and up and round and round and up and round and round and up until they came out into the wood. “Follow me,” said Mr. Happy again, and they both set off through the wood back to Mr. Happy’s cottage.
ミスター・ミゼラブルはためらいましたが、その後をついていきました。彼らはらせん階段をどんどん上っていきました。上へ上へ、ぐるぐると回り、上っては回り、回りながら上って、ついに森の中へと出ました。「僕についてきて」とミスター・ハッピーが再び言い、二人は森を抜けてミスター・ハッピーのコテージへと向かいました。
Mr. Miserable stayed in Mr. Happy’s cottage for quite some time. And during that time the most remarkable thing happened. Because he was living in Happyland Mr. Miserable ever so slowly stopped being miserable and started to be happy. His mouth stopped turning down at the corners.
ミスター・ミゼラブルは、かなりの間ミスター・ハッピーのコテージに滞在しました。そしてその間に、最も驚くべきことが起こったのです。ハッピーランドに住んでいたおかげで、ミスター・ミゼラブルは本当にゆっくりとみじめであることをやめ、幸せになり始めました。彼の口元は、への字に下がるのをやめました。
And ever so slowly it started turning up at the corners.
そして本当にゆっくりと、口角が上がり始めたのです。
And eventually Mr. Miserable did something that he’d never done in the whole of his life. He smiled! And then he chuckled, which turned into a giggle, which became a laugh. A big booming hearty huge giant large enormous laugh. And Mr. Happy was so surprised that he started to laugh as well. And both of them laughed and laughed. They laughed until their sides hurt and their eyes watered.
正式に言うと、ミスター・ミゼラブルはこれまでの人生で一度もしたことがなかったことをしました。彼は微笑んだのです!それから彼はクスクスと笑い、それが乳呑み児の忍び笑いになり、やがて大笑いになりました。響き渡るような、心のこもった、とてつもなく大きくて巨大な、大爆笑です。ミスター・ハッピーはすっかり驚いて、自分も一緒に笑い始めました。そして二人して、笑いに笑いました。お腹が痛くなり、涙が出るまで笑いました。
Mr. Miserable and Mr. Happy laughed and laughed and laughed and laughed. They went outside and still they laughed. And because they were laughing so much everybody who saw them started laughing as well. Even the birds in the trees started to laugh at the thought of somebody called Mr. Miserable who just couldn’t stop laughing.
ミスター・ミゼラブルとミスター・ハッピーは、とにかく笑って笑って笑いまくりました。外へ出ても、二人はまだ笑っていました。二人があまりにも笑っているので、それを見た誰もが同じように笑い始めました。木々の上の鳥たちでさえ、ミスター・ミゼラブルという名前の人がどうしても笑いをとめられない様子を思って、笑い始めるほどでした。
And that’s really the end of the story except to say that if you ever feel as miserable as Mr. Miserable used to you know exactly what to do, don’t you? Just turn your mouth up at the corners. Go on!
そして、もしあなたがかつてのミスター・ミゼラブルのようにみじめに感じることがあれば、どうすればいいかもう正確に分かっていますよね、と言うこと以外に、これで本当にこのお話はおしまいです。ただ、口角を上げてみるのです。さあ、やってみて!
まとめ
ハッピーさんの明るさに引っ張られるように、少しずつ笑顔を取り戻していったみじめさん。ハッピーランドの温かい空気と、ハッピーさんの寄り添う気持ちが、最後には大きな笑い声となって弾ける結末は、読んでいる私たちまで心が軽くなるようです。
「幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せになれる」
もしも少し元気が出ない日や、子どもがむくれてしまっているとき、この物語を思い出して、ほんの少しだけ口角を上げてみてください。たったそれだけのことで、親子の一日が少しハッピーに変わるかもしれません。英語初心者にもやさしい繰り返しの表現が多いので、ぜひベッドタイムの読み聞かせや、毎日の多読の時間に開いてみてくださいね。