子どもがぐずっている時、理由を聞いても答えてくれない時、私たちはつい「どうしたの?」「何がイヤなの?」と言葉で解決しようとしてしまいがちです。でも、ふと黙ってぎゅっと抱きしめてみたら、さっきまでの不機嫌がうそのようにほどけていった…そんな経験、一度はあるのではないでしょうか。
今回ご紹介する『Little Miss Hug』は、まさにそんな「ぎゅっ」の力を描いた、イギリスの人気シリーズ Mr. Men and Little Miss の一冊です。ハグを拒むほど不機嫌なキャラクターが、最後にはどうなるのか。読み終わった後、きっとお子さんをぎゅっとしたくなるはずです。
ここでは、『Little Miss Hug』のあらすじのほか、英語学習のポイント、読み聞かせ動画などを掲載しています。
『Little Miss Hug』の基本情報
| タイトル | Little Miss Hug |
|---|---|
| 著者 | Adam Hargreaves(文・絵) |
| シリーズ | Mr. Men and Little Miss |
| 出版社 | Grosset & Dunlap |
| 対象年齢(目安) | 3歳〜 |
あらすじ
リトルミス・ハグは、世界中で一番ハグをするのが好きな女の子。彼女のハグには特別な秘密があります。それは、彼女の腕が相手に合わせてぴったりフィットすること。小さなリトルミス・タイニーにも、おなかの大きなミスター・グリーディにも、いつでもちょうどいいハグを届けてくれます。
ところがある日、散歩中に出会ったのは、太陽が出ているというだけで不機嫌なミスター・グランピー。思いきりハグしようとしたリトルミス・ハグは、生まれて初めて突き飛ばされてしまいます。「離れろ!」と怒鳴るグランピーに、彼女は戸惑いながらもう一度ぎゅっとしがみつきます。
すると、グランピーの体の奥から不思議な温かい感覚がじわっと広がり始めて——人生で初めて、彼は微笑みます。そして人生で初めて赤面し、人生で初めて自分から誰かを抱きしめます。ただし、それはまだぎこちない「半分だけのハグ」。でもそれが、ミスター・グランピー流の精一杯の愛情表現なのでした。
英語学習のポイント
I bet you have.
相手の経験に「きっとあるでしょうね」と共感を示す時にぴったりのフレーズです。日常会話でもよく使われ、親子の会話に取り入れやすい表現です。
- I bet you have.
- きっとあるでしょうね。(あなたもきっと経験があるはず。)
- Have you ever eaten sushi? — I bet you have!(お寿司を食べたことある?——きっとあるでしょ!)
- I bet you’ve seen this movie before.(この映画、前に観たことあるでしょ。)
Get off of me!
「離れて!」「放して!」と強く拒絶する時の表現です。絵本ではミスター・グランピーがハグを拒む場面で使われていて、子どもが感情を表す英語として印象に残りやすいフレーズです。
- Get off (of me)!
- 離れろ!放して!
- Get off! That’s my toy!(離して!それは僕のおもちゃだよ!)
- Get off the table, please.(テーブルから降りてね。)
once in a while
「たまには」「ときどき」という意味で、頻度が高くないことを柔らかく伝える表現です。絵本では「いばりんぼちゃんでさえ、たまにはハグが必要」という文脈で使われています。
- once in a while
- たまには、ときどき
- We eat out once in a while.(たまには外食するよ。)
- Even Dad needs a hug once in a while.(パパだって、たまにはハグが必要だよ。)
読み聞かせ動画
日本語訳(全文)
Have you ever fallen over and hurt yourself?
転んで怪我をしたことはありますか?
I bet you have.
きっとあるでしょうね。
And then have you wished that someone would come along and give you a hug and make you feel better?
そんな時、誰かがやってきて抱きしめてくれて、気分を晴らしてくれたらいいのにと思ったことはありませんか?
Well, Little Miss Hug is just that person.
さて、リトルミス・ハグ(ハグちゃん)は、まさにそんな人なのです。
Like the time she found Little Miss Tiny after she had fallen off the kerb.
縁石から落ちてしまったリトルミス・タイニーを見つけた時のように。
But there is something else extra special about Little Miss Hug’s hugs.
でも、リトルミス・ハグのハグには、他にも特別なことがあるのです。
It is her extra special arms.
それは、彼女のとても特別な腕です。
They fit perfectly around whoever she is hugging.
その腕は、抱きしめる相手が誰であっても、ぴったりとフィットするのです。
Whether it is Mr Small after a twig fell on him and squashed his hat.
小枝が落ちてきて帽子が潰れてしまったミスター・スモール(スモールくん)であっても。
Or Mr Bump after one of his bumps.
あるいは、いつものようにドスンとぶつけてしまった後のミスター・バンプ(ドスンくん)であっても。
Or even Mr Greedy when he has a tummy ache.
お腹が痛くなってしまったミスター・グリーディ(よくばりくん)であっても。
Little Miss Hug is always there with a perfectly fitting hug to make everything better.
リトルミス・ハグはいつもそこにいて、すべてを解決してくれる完璧なハグをしてくれるのです。
Then there are times when nobody has hurt themselves.
また、誰も怪我をしていない時もあります。
Happy times, like birthdays.
誕生日などの幸せな時です。
Everyone wants a birthday hug!
誰もが誕生日のハグを欲しがります!
And times when she hugs just for the fun of it.
そして、ただ楽しいためにハグをすることもあります。
Even the likes of Little Miss Bossy need a hug once in a while.
リトルミス・ボッシー(いばりんぼちゃん)のような人でさえ、たまにはハグが必要なのです。
So, everyone needs a hug.
だから、誰もがハグを必要としています。
Or so Little Miss Hug thought.
リトルミス・ハグはそう思っていました。
The other day when she was out for a walk, she heard someone hidden on the other side of a hedge.
先日、彼女が散歩に出かけていると、生け垣の向こう側に隠れている誰かの声が聞こえてきました。
Someone huffing and puffing and moaning and groaning.
誰かがフーフー、ハァハァと言いながら、不平不満を漏らしています。
Someone who was in a very bad temper.
とても機嫌の悪い誰かです。
Mr. Grumpy!
ミスター・グランピー(へそまがりくん)です!
And why was Mr Grumpy in such a bad mood?
では、なぜミスター・グランピーはそんなに不機嫌だったのでしょうか?
Because the sun was out!
太陽が出ていたからです!
There really is no pleasing Mr Grumpy.
ミスター・グランピーを喜ばせるのは、本当に不可能なことです。
Quick as a flash, Little Miss Hug ran around the hedge,
あっという間に、リトルミス・ハグは生け垣を回り込み、
stretched out her arms, and hugged Mr Grumpy.
腕を広げて、ミスター・グランピーを抱きしめました。
Or at least she tried to, but something happened that had never happened to Little Miss Hug before.
少なくとも彼女はそうしようとしたのですが、リトルミス・ハグにとって今まで一度も起きたことがないことが起こりました。
Mr Grumpy pushed her away.
ミスター・グランピーが彼女を突き放したのです。
“Get off of me!” shouted Mr Grumpy.
「離れろ!」とミスター・グランピーは叫びました。
Little Miss Hug could not believe her ears.
リトルミス・ハグは自分の耳が信じられませんでした。
She could not believe her eyes.
自分の目が信じられませんでした。
Nobody had ever refused one of her hugs!
彼女のハグを拒んだ人なんて、これまで一人もいませんでした!
“But…but, everyone likes a hug!” she cried.
「でも……でも、ハグはみんな好きなはずよ!」と彼女は叫びました。
She was so confused she hugged Mr Grumpy again.
彼女はとても混乱して、もう一度ミスター・グランピーを抱きしめました。
“I know what you’re trying to do,” said Mr Grumpy.
「お前の魂胆は分かっているぞ」とミスター・グランピーは言いました。
“But it won’t work. I am grumpy and I like being grumpy, and no amount of hugging will change that.”
「だが無駄だ。俺は不機嫌なんだ、不機嫌でいるのが好きなんだ。いくらハグしたってそれは変わらないぞ」
Little Miss Hug did not let go.
リトルミス・ハグは離しませんでした。
“I said…” began Mr Grumpy, but then he stopped.
「俺は言ったんだ……」とミスター・グランピーは言いかけましたが、そこで止まりました。
Something was happening to Mr Grumpy that had never happened to him before.
ミスター・グランピーに、これまで一度も起きたことがないことが起きていたのです。
He could feel a strange warm feeling spreading out from deep inside him.
彼は、自分の体の奥深くから不思議な温かい感覚が広がっていくのを感じました。
Little Miss Hug hugged him tighter.
リトルミス・ハグは彼をより強く抱きしめました。
And then the most extraordinary thing happened.
すると、最も驚くべきことが起こりました。
Very slowly, Mr Grumpy smiled.
とてもゆっくりと、ミスター・グランピーが微笑んだのです。
For the first time in his life, he was happy.
人生で初めて、彼は幸せでした。
Little Miss Hug let go of him.
リトルミス・ハグは彼を離しました。
“I must say,” said Little Miss Hug, “you have a lovely smile.”
「言わせてもらえば」とリトルミス・ハグは言いました。「素敵な笑顔ね」
And can you guess what Mr. Grumpy did next?
さて、ミスター・グランピーが次に何をしたか分かりますか?
He blushed!
彼は赤面したのです!
For the first time in his life, he blushed.
人生で初めて、彼は顔を赤らめました。
And then he hugged Little Miss Hug.
そして、彼はリトルミス・ハグを抱きしめました。
For the first time in his life, he hugged someone!
人生で初めて、彼は誰かを抱きしめたのです!
Although as you can see, it was almost a hug, not a proper Little Miss Hug hug.
ご覧の通り、それはハグに近いものでしたが、ちゃんとしたリトルミス・ハグ流のハグではありませんでした。
What you might call…
それは、いわば……
…half a hug!
……半分だけのハグ!
A Mr Grumpy hug.
ミスター・グランピー流のハグでした。
おわりに
不機嫌で、ハグなんていらないと突き放すミスター・グランピーの姿は、イヤイヤ期の子どもや、疲れて余裕がない時の私たち自身と重なるところがあるかもしれません。でも、リトルミス・ハグは理由を問い詰めたり、説教したりしませんでした。ただ、離さなかった。
それだけで、グランピーの中に「人生で初めての温かい感覚」が広がっていったんですよね。最後の「半分だけのハグ」がまた愛おしくて、完璧じゃなくても気持ちを伝えようとするその不器用さに、こちらの頬もつい緩んでしまいます。
今夜の読み聞かせのあとは、お子さんと「ぎゅっ」としてみてください。完璧なハグじゃなくても、「半分だけのハグ」でもきっと十分伝わるはずです。