こんにちは!
お子さんがお絵かきをしていて、「あーもう!うまく描けない!」と、せっかく描いた絵をぐしゃぐしゃにしてしまうこと、ありませんか?
「上手じゃなくてもいいんだよ」と声をかけても、本人は納得いかない様子…。見ている親としても、なんだか切ない気持ちになりますよね。
「完璧じゃなきゃダメだ」というその気持ち、実は大人になった私たちの中にも、深く根付いているのかもしれません。
今回は、そんなガチガチに固まった心をふんわりとほぐしてくれる、魔法のような言葉が登場する英語絵本『Ish』をご紹介したいと思います。
ここでは『Ish』の簡単なあらすじの他、文中に出てくる日常の英語表現、おすすめの読み聞かせ動画のご紹介や日本語訳などを掲載しています。
お話のあらすじ
絵を描くのが大好きだった少年、ラモン。
ある日、彼が描いた花瓶の絵を見たお兄ちゃんが、悪気なく笑ってこう言います。「それ、なあに?」
その一言で、ラモンの心はポキリと折れてしまいました。
「ちゃんとした絵」を描こうと頑張れば頑張るほど、何だかうまくいかない。何枚も何枚も紙をくしゃくしゃにして、とうとうラモンは鉛筆を置いてしまいます。「もう、おしまいだ」と。
そんな彼の様子を、じっと見ていた妹のマリソル。
ラモンが捨てたはずの「失敗作」を拾って走り去る妹を追いかけ、彼女の部屋に飛び込んだラモンが見たものとは…。
そこには、彼がぐしゃぐしゃにして捨てたはずの絵が、まるで美術館のように、壁一面に飾られていたのです。
「これ、花瓶のつもりだったんだけど…」とつぶやくラモンに、妹は目を輝かせて言いました。
「うん、花瓶っぽい (vase-ish!) もの!」
「〜っぽい(ish)」。この言葉が、ラモンの世界を再びカラフルに輝かせていきます。
この絵本がそっと教えてくれること
「上手な絵」というと、私たちはつい「本物そっくりな絵」を思い浮かべてしまいがちですよね。
でも、本当にそうでしょうか?
お兄ちゃんの「これ、何?」という言葉は、ラモンに「正しく描かなきゃいけない」というプレッシャーを与えました。
失敗を恐れて、大好きなはずのお絵かきが苦しくなってしまう。この気持ち、なんだかとてもよく分かります。
私たち大人も、知らず知らずのうちに「完璧」や「正解」という物差しで、自分や周りを測ってしまっているのかもしれません。
この絵本は、そんな私たちに「〜っぽさ(ish)」という、とても素敵な考え方を教えてくれます。
完璧な花瓶じゃなくても、「花瓶っぽい」何か。正確な木じゃなくても、「木っぽい」何か。
それは失敗なんかじゃなくて、あなただけのユニークな表現なんだよ、と。
「〜ish」という魔法の言葉を手に入れたラモンは、再び自由に、そして楽しそうに絵を描き始めます。
彼が描くのは、目に見えるものだけではありません。「平和っぽい(peace-ish)」とか「ワクワクっぽい(excited-ish)」といった、心の中の感情までも。
きっちりとした「正解」だけを目指すのではなく、「なんとなく、こんな感じ」という曖昧な部分を面白がること。
その「〜っぽさ」の中にこそ、その人だけの魅力や、温かみが宿るのかもしれませんね。
英語学習のポイント
この絵本のタイトルにもなっている -ish は、日常会話でとてもよく使われる便利な表現です。
今回はこの -ish を含め、2つのフレーズをピックアップしてみました。
ish
名詞や形容詞、数字の後ろにくっついて、「〜っぽい」「〜ごろ」「〜くらい」という、少し曖昧なニュアンスを加えることができます。日本語の「〜的な?」みたいな感覚で、ネイティブが本当によく使う表現です。
例文:
Let’s meet around 7-ish. (7時ごろに会おうか。)
The sweater is a blue-ish green. (そのセーターは青っぽい緑色だね。)
burst out laughing
ラモンのお兄ちゃんが、絵を見て「どっと笑い出す」場面で burst out laughing という表現が使われています。burst out は「突然〜しだす」という意味で、感情が急に爆発するようなイメージです。
例文:
He told a silly joke and everyone burst out laughing. (彼がくだらない冗談を言ったら、みんなどっと笑い出した。)
When she saw the surprise party, she burst out crying with joy. (サプライズパーティーを見て、彼女は嬉しさのあまりわっと泣き出した。)
読み聞かせ動画のご紹介
日本語訳
Ramon loved to draw.
ラモンは、絵を描くのが好きでした。
One day, Ramon was drawing a vase of flowers.
ある日、ラモンは花瓶を描いていた。
His brother Leon, leaned over his shoulder.
彼の兄レオンは、彼の肩越しにもたれかかった。
Leon burst out laughing “what is that?” he asked.
レオンは笑って 「これは何?」 と尋ねた。
Ramon couldn’t even answer.
ラモンも答えられませんでした。
He just crumpled up the drawing and threw it across the room.
彼はつい絵をくちゃくちゃにして、部屋の向こう側にそれを投げた。
Leon’s laughter haunted Ramon.
レオンの笑い声はラモンを悩ました。
He kept trying to make his drawings look “right.”
彼は彼の絵を「正しい」ものに見せようと努力し続けました。
but they never did.
しかしそれらは決してそうならなかった。
After many months and many crumpled sheets of paper,
多くの歳月と多くのもみくしゃにされた紙の後、
Ramon put his pencil down.
ラモンは鉛筆を下ろした。
“I’m done.”
「私はこれで終わりです。」
Marisol his sister, was whatching him.
彼の妹、マリソルが彼を見ていた。
“What do you want?” he snapped.
「あなたは何がしたい?」と、彼は鋭く言いました。
“I was watching you draw,” she said.
「私は、あなたが絵を描くのを見ていました」と、彼女は言いました。
Ramon sneered.
ラモンは冷笑しました。
“I’m not drawing! Go away!”
「私は、絵を描いていません!去ってください!」
Marisol ran away, but not before picking up a crumpled sheet of paper.
マリソルは逃げました。しかしもみくしゃにされた紙を拾う前ではありません。
“Hey! Come back with that!”
「ねえ!それとともに戻ってください!」
Ramon raceed after Marisol,
ラモンはマリソルの後を追いかけ
up the hall and into her room.
ホールを上がり彼女の部屋へ。
He was about to yell but fell silent when he saw his sister’s walls..
彼は叫んでいたが、妹の壁を見て静かになった。
He stared at the crumpled gallery.
彼はくちゃくちゃのギャラリーを見つめた。
“This is one of my favorites,”
「これは私のお気に入りの一つです」
Marisol said, pointing.
マリソルは指さして言った。
“That was supposed to be a vase of flowers.” Ramon said.
「それは花瓶であるはずだった。」ラモンはいった。
“but it doesn’t look like one.”
「しかしそれはそんな風に見えない」
“Well, it looks vase – ISH!” she exclaimed.
「まあ、それは花瓶っぽく見える!」 彼女は叫んだ。
“Vase – ish?”
花瓶..ぽい?
Ramon look closer.
ラモンはもっと近くで見る。
Then he studied all the drawings on Marysol’s walls and began to see them in a whole new way.
その後、彼はメンソルの壁に描かれているすべての絵を見返し、まったく新しい方法でそれらを見るようになりました。
“They do look..ish,” he said.
「それらは見た目が それっぽい」彼は言った。
Ramon felt light and energized.
ラモンは光を感じ、活性化した。
Thinking ish-ly allowed his ideas to flow freely.
それっぽくて良い思考は彼のアイデアが自由に流れることを可能にしました。
He began to draw what he felt – loose lines.
彼は自分が感じたことを描くようになります。
Quickly springing out without worry.
悩みもなく素早く噴き出します。
Ramon once again drew and drew the world around him.
ラモンは再び描き始め、彼の周りの世界を描いた。
Making an ish drawing felt wonderful.
それっぽい描き方はステキに感じさせる。
He fuled his journals..
彼は彼の日誌を広げた..
Tree-ish
木っぽい
house-ish
家っぽい
boat-ish
船っぽい
afternoon-ish
午後っぽい
fish-ish
魚っぽい
sun-ish
太陽っぽい
Ramon realized he could draw ish feelings too.
ラモンは彼が感情を引き出すことができることにも気づいた。
peace-ish silly-ish
平和っぽい バカっぽい
excited-ish
興奮ぽい
His ish art inspire ish writing.
彼のそれっぽいアートはそれっぽさに起因する。
He wasn’t sure if he was writing poems, but he knew they were poem-ish.
彼は詩を書いているのかどうかは分からなかったが、詩っぽいことであることは分かっていた。
One spring morning.
ある春の朝、
Ramone had a wonderful feeling.
ラモンは素晴らしい気分でした。
It was feeling that even ish words and ish drawings could not capture.
それは、「っぽい」言葉や、「っぽい」絵画では表せない気分でした。
He decided not to capture it.
彼はそれをとらえないことにしました。
Instead, he simply savored it..
代わりに、彼は単にそれを味わった。
And Ramon lived ishfully ever after.
そしてラモンはその後ずっと「っぽい」世界にたっぷり浸る生活を送りました。
最後に:「〜っぽさ」というお守り
というわけで、今回は絵本『Ish』をご紹介しました。
私たちはつい、白か黒か、100点か0点かで物事を判断してしまいがちです。でも、その間にあるグラデーションの「〜っぽさ」を大切にできたなら、世界はもっと優しく、豊かに見えるのかもしれません。
お子さんが何かに挑戦して「うまくできない!」と悔しがっていたら、「大丈夫、とっても〜っぽいよ!」と声をかけてあげてみてください。そして、完璧じゃない自分自身のことも、「まあ、私っぽいかな」なんて、優しく受け止めてあげられたら素敵ですよね。
あなたの「ish」も、きっと誰かにとっては、宝物のように輝いて見えるはずですよ。