アップルパイを作りたい。
ところが、お店に行ってみたら閉まっている。
普通なら「今日はやめようかな」で終わりそうですが、この絵本はそこからがすごい。
『How to Make an Apple Pie and See the World』では、材料を買えないなら、自分で世界中へ取りに行ってしまいます。イタリアで小麦、フランスで卵、スリランカでシナモン、イギリスで牛乳、ジャマイカで砂糖。そして最後は、りんごを求めてバーモントへ。
アップルパイ作りの絵本なのに、気づけば世界旅行。
食べ物がどこから来るのかを見ながら、旅の中で使われる自然な英語にも触れられる一冊です。
絵本の基本情報
| タイトル | How to Make an Apple Pie and See the World |
|---|---|
| Amazon表記 | How to Make an Apple Pie and See the World (Dragonfly Books) |
| 読みどころ | アップルパイの材料を求めて世界各地を旅する物語 |
タイトルは「アップルパイを作って、世界を見て回る方法」
How to Make an Apple Pie and See the World
そのまま読むと、「アップルパイの作り方、そして世界を見る方法」といった意味です。
最初は、料理絵本らしい始まり方。
「アップルパイを作るのは、本当にとても簡単。」
材料を市場で買って、混ぜて、焼くだけです。
「もちろん、市場が閉まっていなければ、ですけどね。」
ここから「アップルパイの作り方」が、突然「世界を見る旅」へ変わっていきます。タイトルがそのまま物語の仕掛けになっているんですね。
お話のあらすじ
アップルパイを作ろうと市場へ行った主人公。ところが市場はお休みで、みんな釣りへ出かけていました。
そこでスーツケースと買い物リストを持ち、船に乗ってヨーロッパへ。
イタリアでは小麦を集め、フランスでは卵を手に入れます。卵が割れないように、いっそニワトリごと連れて行こう、という発想もこの絵本らしいところ。
その後も旅は続きます。
スリランカではシナモン、イギリスでは牛乳、海では塩、ジャマイカではサトウキビ。そして家へ帰ろうとしたところで、大事なものを忘れていたことに気づきます。
りんごです。
最後はバーモントでりんごを摘み、ようやく材料がそろいます。
世界をひと回りして集めた材料を粉やバター、砂糖などに加工し、ようやくアップルパイの完成です。
アップルパイを作るだけのはずが、材料を集めるために世界一周。ちょっと大げさな展開だからこそ、食べ物と国が自然につながって見えてきます。
アップルパイの材料から世界が見えてくる
この絵本で面白いのは、単にいろいろな国を旅するだけではないところ。
「小麦粉は小麦からできる」
「シナモンは木の皮から作られる」
「海水から塩をとる」
「牛乳からバターを作る」
普段はスーパーで袋や瓶に入った状態で見る材料が、もともとは何だったのかが物語の中に出てきます。
主人公は、集めてきた小麦を粉にし、シナモンの樹皮を挽き、海水を蒸発させ、牛乳をバターにしていきます。
アップルパイをひとつ作るだけなのに、その向こう側に畑や木や動物や海がある。
「この食べ物は、何からできているんだろう?」
そんな話をしながら読むのも楽しそうです。
この絵本で注目したい英語
久しぶりに勉強し直すときの表現
brush up on ~ は、「~を復習する」「以前に身につけたものを磨き直す」という表現です。
船でイタリアへ向かう途中、最初の6日間を使ってイタリア語を復習する、という場面で使われています。
たとえば、しばらく使っていなかった英語をもう一度勉強するときなら、I need to brush up on my English. のように使えます。学校で習う study や practice だけでは出しにくい、「前にやったことをもう一度磨く」という感じがある表現です。
「それよりもっといいのは」と案を一歩進める表現
Better yet, … は、「さらにいいのは…」「それよりもっといいのは…」という意味。
卵をもらおうとした主人公ですが、「それよりもっといい。ニワトリごと連れて行こう」と話が進みます。
普通の方法から、さらに良い案へ進むときに使える表現です。この絵本では、卵が割れるのが心配ならニワトリごと、牛乳を新鮮に保ちたいなら牛ごと、と話がどんどん大きくなります。意味とユーモアが一緒に残る場面です。
「あとは~するだけ」と伝える表現
all you have to do is ~ は、「あなたがしなければならないのは~だけ」。自然な日本語なら「あとは~するだけ」です。
世界中から材料を集め終えたところで出てきます。
日常でも使いやすい表現ですが、この場面では「あとは小麦を粉にして、シナモンを挽いて、塩を作って、バターを作って…」と、全然「あとは少しだけ」ではありません。ここも、この絵本のとぼけた面白さが出ています。
旅の流れを追いながら英語を読んでみよう
市場が閉まっている。それなら世界へ
They’ve gone fishing.
Now, what do I do?
市場が閉まっていて、お店の人たちは釣りへ。
「さて、どうしよう?」
ここまでは日常にもありそうな困りごとです。
ところが解決方法は、買い物を翌日に延期することではありません。
スーツケースを持って船に乗る。
ここで一気に、この絵本の世界へ引き込まれます。
シナモンを取りにスリランカへ
スリランカを「インド洋にある洋梨の形をした島」と説明する場面もあります。
食材を探す旅の途中で、国の場所や形も自然に登場します。
地図を横に置いて、
「イタリアはどこ?」
「スリランカはどこ?」
「次はどっちへ行くのかな?」
と追いかけてみるのも面白そうです。
最後に忘れていたのは、いちばん大事な材料
Aren’t you forgetting something?
What about the apples?
世界を回って小麦や卵、シナモン、牛乳、塩、砂糖を集めたのに、肝心のりんごを忘れていました。
ここまで来て「アップルパイなのに、りんごがない」。
この少し前でページを止めて、「何か忘れてない?」と聞いてみるのも楽しそうです。子どもが先にりんごに気づいたら、物語への参加感もぐっと増します。
読み聞かせ動画
物語を英語の音でも楽しみたいときはこちら。
文章は少し長めなので、最初から全部聞き取ろうとしなくても大丈夫。
国の名前、食材、Better yet のように耳に残る表現を拾いながら聞くと、物語の流れを追いやすくなります。
親子で読むなら「この材料はどこから来た?」も面白い
この絵本を読んだあと、冷蔵庫やキッチンを見ると少し景色が変わるかもしれません。
小麦粉、牛乳、砂糖、シナモン、りんご。
普段は「材料」としてしか見ていないものにも、それぞれ元の姿があります。
絵本の最後では、自分でもアップルパイを作れるよう、大人とレシピを読んでみようと案内されています。そして、材料を探しに行く場所が冷蔵庫くらいで済むといいね、という締めです。
世界一周したあとに冷蔵庫。
この落差まで含めて、最後まで楽しい一冊です。
まとめ
『How to Make an Apple Pie and See the World』は、アップルパイを作るための買い物が、そのまま世界旅行になってしまう英語絵本。
食べ物、国、自然、英語表現がひとつの物語につながっています。
特に brush up on ~、Better yet, …、all you have to do is ~ のような表現は、単語帳で覚えるよりも「どんな場面で使うか」が見えやすいのがいいところ。
アップルパイを食べる前に読むのもよし。
世界地図を広げながら読むのもよし。
「この材料、本当はどこから来ているんだろう?」と親子で話を広げられる絵本です。