夜の森。古い屋敷。そして、窓からこちらを見ているドクロ。
表紙だけを見ると、かなり怖そうですよね。
でも『The Skull』を読んでいくと、少し印象が変わってきます。
逃げてきた少女オティラを屋敷へ招き入れるドクロ。二人はお茶を飲み、梨を食べ、広い部屋でダンスまでします。
もちろん、何も起こらないわけではありません。
夜になると、この屋敷にはドクロを追いかける首なしの骸骨がやってきます。
ちょっと怖い。でも、妙におかしい。そして読み終わるころには、オティラとドクロの関係がなんだか心に残る。
『The Skull』は、そんな不思議なバランスを持った一冊です。
#New York Times Bestsellerとなった作品で、Jon Klassenがチロル地方の昔話をもとに描いた物語です。
絵本の基本情報
| タイトル | The Skull |
|---|---|
| サブタイトル | A Tyrolean Folktale |
| 作・絵 | Jon Klassen |
| 出版社 | Candlewick Press |
| ページ数 | 112ページ |
| 対象年齢 | 6〜9歳 |
| 出版 | 2023年7月11日 |
短い英語絵本を卒業して、少し長い物語を読んでみたい子にも手に取りやすい長さです。
『The Skull』ってどんな意味?
英語の skull は「頭蓋骨」。
全身の骨格を表す skeleton とは違い、この物語で屋敷に暮らしているのは文字どおり「頭だけのドクロ」です。
これがまた妙に普通に話すんですよね。
お茶が好きで、梨も好き。ダンスも好き。
見た目と暮らしぶりのギャップが、この物語の面白さのひとつです。
あらすじ|森へ逃げた少女が出会ったのは…
ある夜、みんなが眠っているあいだに、少女オティラは家から逃げ出します。
暗い森を走り続け、とうとう力尽きて雪の中で泣いてしまうオティラ。
それでも再び歩き始めると、森の向こうに大きな古い屋敷が現れます。
扉をたたいても誰も出てきません。
ところが声が聞こえて見上げると、窓からこちらを見ていたのは――ドクロ。
オティラは、自分には隠れて休める場所が必要だと伝えます。
ドクロはオティラを屋敷へ招き入れます。
二人で部屋を見て回り、お茶を飲み、梨を食べ、やがて舞踏室ではダンスまで。
なんとも奇妙なのに、ここまでは驚くほど穏やかな時間が流れます。
ところが夜になると、ドクロはひとつの秘密を話します。
この屋敷には毎晩、首のない骸骨がやってきて、自分を追いかけるというのです。
今度は、逃げてきたオティラがドクロを助ける側になります。
ここから物語は、一気に動き始めます。
怖いのに、ずっと怖いわけではない
『The Skull』の面白いところは、怖そうなものが次々に出てくるのに、物語全体がホラー一色ではないところ。
ドクロはオティラを脅しません。
オティラもドクロを見て逃げ出しません。
二人のやり取りはむしろ淡々としていて、その静けさがJon Klassenらしいユーモアにつながっています。
たとえばオティラが屋敷を案内される場面。
ドクロはお茶を飲む部屋を紹介しますが、自分ではお茶も作れなければ、火もつけられません。
梨をかじれば、食べた梨はそのまま体を通り抜けて床へ。
それでも、
なんて言っています。
怖いはずのドクロが、だんだんかわいく見えてくる。
ここ、いいですよね。
オティラとドクロは、お互いの事情を無理に聞かない
もうひとつ印象的なのが、二人の距離感です。
ドクロは、オティラが家から逃げてきたことを知っています。
でも、彼女がそれ以上話そうとしないと分かると、理由を聞き出そうとはしません。
ただ、
と受け止めます。
その後、今度はオティラがドクロの怖がっているものを知ります。
逃げてきた少女と、毎晩何かから逃げているドクロ。
二人とも「怖いものを持っている」というところで、少し似ているのかもしれません。
「怖がらないこと」が勇気なのではなく、怖いものがあっても相手のそばにいる。オティラとドクロの関係を見ていると、そんな読み方もできそうです。
この絵本で注目したい英語
「逃げる」を表す run away
run away は「逃げる」「逃げ出す」。
この物語では、冒頭からとても重要な表現です。
オティラはただ森を散歩しているわけではありません。何かから逃げ、隠れて休める場所を探しています。
そのため、run away を知っているだけで物語の始まりがぐっと分かりやすくなります。
run は「走る」ですが、run away になると「逃げる」という意味になります。
例文:
My cat ran away.
「うちの猫が逃げてしまった。」
相手を丁寧に誘う Would you care to …?
舞踏室へ行ったオティラは、ドクロにこんなふうに声をかけます。
Would you care to …? は、「〜なさいませんか?」と少し丁寧に誘う表現です。
子ども同士の日常会話で頻繁に使うくだけた言い方ではありませんが、この場面では舞踏会らしい少しかしこまった響きがぴったり。
ドクロも、
と返し、二人は暗くなるまで踊ります。
ちょっと芝居がかったやり取りなのも面白いところです。
Would you like to dance? よりも少しかしこまった雰囲気があります。言葉の意味だけでなく、場面に合った言い方を感じられる表現です。
しっかりつかむ hold on tight
首なし骸骨がドクロを奪おうとしたとき、オティラはドクロを離しません。
hold on は「つかまる」「持ち続ける」。
そこに tight が加わることで、「しっかり」「ぎゅっと」という感じになります。
そして続く、
の let go は「手を放す」。
hold on と let go が反対方向の動きとして続けて出てくるので、場面と一緒に覚えやすいところです。
押しつけずに誘う if you want
物語の終わり近く、ドクロはオティラに言います。
「もしよかったら、ここに一緒にいてもいいよ。」
この if you want がいいんですよね。
「ここにいて」と決めるのではなく、最後はオティラに選ばせています。
if you want を添えると、「もしよければ」「そうしたければ」という、相手の気持ちに選択を残す言い方になります。
例文:
You can come with us, if you want.
「よかったら一緒に来てもいいよ。」
物語の最後に置かれているからこそ、意味だけでなく二人の関係まで伝わってくる一文です。
読み聞かせ動画で英語の音を聞いてみよう
今回はこちらの読み聞かせ動画があります。
112ページある作品なので、最初から全部の英語を理解しようとしなくても大丈夫。
オティラとドクロの短いやり取りや、
All right.
Thank you.
You’re welcome.
といった聞き取りやすい会話を拾いながら見るのも楽しめます。
物語の流れと一緒に英語を見てみよう
暗い森を走り続けるオティラ
物語は、オティラが夜中に逃げ出すところから始まります。
走っても走っても森は続き、聞こえてくるのは自分の名前を呼ぶような声。
とうとう雪の中へ倒れ込み、オティラは泣きます。
でも、泣き終わると再び立ち上がる。
ここですでに、ただ怖がるだけではないオティラの性格が見えてきます。
古い屋敷と、不思議な住人
森を抜けたオティラが見つけた大きな屋敷。
そこで出会うのがドクロです。
怖そうな出会いなのに、そこから始まるのは屋敷見学。
暖炉の部屋、庭の部屋、仮面の部屋、地下牢、塔、そして舞踏室。
「次はどんな部屋?」と追っていくだけでも楽しめます。
夜になると現れるもの
ところが、その穏やかな空気が夜になると変わります。
ドクロを探して毎晩やってくる首なし骸骨。
オティラは逃げるのではなく、ドクロを抱えて守ります。
最初は「逃げる側」だった女の子が、ここでは誰かを助ける側になっているんですね。
そして二人の朝
長い夜が終わった翌朝。
オティラとドクロは朝食を食べ、散歩へ出かけます。
そしてドクロは、オティラにここで暮らしてもいいと伝えます。
最後の会話はとても短いもの。
でも、物語の最初から読んできたあとでは、その短さがかえって残ります。
オティラはどうしてドクロを怖がらなかったのかな。ドクロはどうしてオティラに家出の理由を何度も聞かなかったのかな。答えを決めず、絵を見ながら話してみるのも面白そうです。
『The Skull』はどんな子に向いている?
かわいい動物や明るい色の絵本とは、かなり雰囲気が違います。
暗い森、ドクロ、首なし骸骨。
少し不気味なものが好きな子なら、表紙を見ただけで気になるかもしれません。
一方で、物語の中にはユーモアのある会話や、オティラとドクロが静かに距離を縮めていく場面もたくさんあります。
対象年齢は6〜9歳。
文章量もあるので、英語を始めたばかりの子が一人で読む本というより、読み聞かせをしたり、絵を見ながら大人と一緒に物語を追ったりする読み方が合いそうです。
まとめ|怖さの向こうに残る、ちょっと変わった友情
『The Skull』には、ドクロも首なし骸骨も出てきます。
確かに怖い。
でも読み終わったあとに残るのは、怖さだけではありません。
逃げてきたオティラを受け入れるドクロ。
そして、ドクロが困ったときには迷わず助けるオティラ。
二人とも相手のことを根掘り葉掘り聞かず、必要なときにはそばにいる。
その距離感が、このちょっと変わった物語を不思議とやさしく見せているのかもしれません。
英語も、run away や hold on tight のように場面から意味をつかみやすい表現から、Would you care to …? のような物語ならではの言い回しまでいろいろ。
少し長めの英語の物語へ進んでみたいときにも、印象に残る一冊です。