こんにちは!
子どもが何かに挑戦して、「できない!」と癇癪を起したり、すっかり諦めてしまったりすること、ありますよね。新しい自転車に乗ろうとして何度も転んだり、靴紐がうまく結べなかったり。そんなとき、親としては「がんばれ!」と応援したいけれど、その言葉がプレッシャーになっていないか、心配になることもあります。
「もうやらない!」と固く心を閉ざしてしまった子どもに、どうやって前を向く力をプレゼントできるでしょうか。もしかしたら、必要なのは根性の言葉ではなく、ほんの少し視点を変える小さな魔法の言葉なのかもしれません。
今日ご紹介する英語絵本『The Magical Yet』は、そんな「できない」の壁にぶつかったすべての子どもたち、そして大人たちにも、そっと寄り添ってくれる一冊です。この絵本が教えてくれるのは、失敗を乗り越えるための、シンプルでとてもパワフルな考え方です。
ここでは「The Magical Yet」の簡単なあらすじの他、文中に出てくる日常の英語表現、おすすめの読み聞かせ動画のご紹介や日本語訳などを掲載しています。
お話のあらすじ
夢がかなわなかったり、できないことがあって落ちこんだり。ピカピカの新しい自転車に、何度挑戦してもうまく乗れない。もうイヤだ、絶対に乗らない、一生歩いてやる!そんな風に、すっかり心を閉ざしてしまった主人公の前に、不思議な友だちが現れます。
その子の名前は「Yet(まだ)」。
この「Yet」は、いつでも私たちのそばにいてくれる、とっても心強い味方です。「できない」という言葉の後ろに「Yet」をくっつけるだけで、世界はまったく違って見えてきます。靴紐が結べない?「まだ」結べないだけ。自転車に乗れない?「まだ」乗れないだけ。失敗も、つまずきも、「Yet」と一緒なら大丈夫。焦らなくてもいい、一晩ではできなくてもいいんだよと、温かく見守ってくれます。この小さな魔法の言葉が、諦めかけた心に再び挑戦する勇気を与えてくれます。
英語学習のポイント
この絵本には、子どもの気持ちを代弁するような、シンプルで心に響く表現がたくさん出てきます。今回はその中から、日常会話でも応用しやすいフレーズを2つ選んでみました。
on the right track
これは「順調に進んでいる」「正しい方向に進んでいる」という意味で使われるイディオムです。目標に向かって物事がうまくいっている状態を表します。例えば、料理中に「うん、いい感じに進んでるぞ」と言いたい時や、仕事のプロジェクトが計画通りに進んでいる時なんかにぴったりです。
例文:
“Don’t worry, you’re on the right track. Just keep practicing.”
(心配しないで、順調だよ。そのまま練習を続けてごらん。)
get over them all
「get over」は「~を乗り越える」という意味を持つ、とても便利な句動詞(phrasal verb)です。句動詞というのは、動詞と前置詞などがセットになって特別な意味を持つ言葉のことです。病気から回復したり、困難を克服したり、失恋から立ち直ったりと、物理的・精神的な壁を乗り越える時に幅広く使えます。
例文:
“It was a tough time, but we helped each other get over it.”
(大変な時期だったけど、私たちはお互いに助け合ってそれを乗り越えたんだ。)
読み聞かせ動画のご紹介
日本語訳
There are days when your dreams haven’t come true or you’re upset by the things you can’t do.
夢がかなわなかったり、できないことに腹が立ったりする日もある。
If you’ve lost or failed or cried (just a bit), you’re tired of waiting, ready to quit.
負けたり、失敗したり、泣いたりして(ほんの少し)、待つのに疲れ、やめたくなっている。
Like that shiny new bike you couldn’t ride,
あのピカピカの新しい自転車みたいに。乗れなかった、
and it didn’t matter how hard you tried.
どんなに頑張ってもダメだった。
You couldn’t pedal and you couldn’t steer and you couldn’t get that bike into gear.
ペダルもこげない、ハンドルもきれない、ギアもうまく入らない。
Then, when you thought you were on the right track, you popped a wheelie and fell on your back.
そして、ようやくうまくいくと思った矢先、ウィリーして(前輪が上がって)背中から転んでしまった。
And now you won’t ride.
もう乗らない。
No way. Not never.
絶対に。二度と。
No riding for you.
きみはもう乗らない。
You’ll walk…forever.
きみは歩く…永遠に。
Don’t give up now!
今あきらめちゃダメ!
There’s a major game changer – a most amazing thought rearrange-er!
状況をガラリと変えるものがある。すごい考え方チェンジマシーンだ!
Someone to show you how good you can get:
きみがどれだけ上手になれるか見せてくれる誰か:
Now, introducing…
さあ、ご紹介しよう…
The Magical Yet!
「魔法の『まだ』」!
With this Yet’s magic, you can begin to see that you’re going – beyond where you’ve been.
この『まだ』の魔法があれば、きみは自分が進んでいること、今までの自分を超えていくことが見え始める。
There are so many things that you’ve learned to do when you didn’t know the Yet was with you.
きみには、この『まだ』が一緒にいることに気づかなかった頃に、できるようになったことがたくさんある。
Like when you babbled before you could talk, or how you crawled before you could walk.
おしゃべりする前に、あーうーと話していたみたいに。歩く前に、ハイハイしていたみたいに。
Yet’s a dreamer, a schemer, a hoper, a tryer, a maker, a doer, a got to fly higher.
『まだ』は夢見る人、計画する人、希望を持つ人、挑戦する人、作る人、実行する人、もっと高く飛ばなきゃって人。
This Yet finds a way, even when you don’t.
きみに方法が見つからなくても、この『まだ』は見つけてくれる。
And Yet knows you will when you think you won’t.
そして『まだ』は、きみが無理だと思っても、きみができることを知っている。
Like that shiny new bike that you couldn’t ride –
あの乗れなかったピカピカの自転車みたいに。
hop right back on with the Yet by your side.
『まだ』と一緒に、もう一度飛び乗ってみよう。
Yet doesn’t mind warm-ups, fixes, and flops, doovers, redos, stumbles, and stops.
『まだ』は準備運動も、修理も、失敗も、やり直しも、もう一回も、つまずきも、立ち止まりも気にしない。
Yet knows there’s mistakes – some big and some small.
『まだ』は、間違いがあることを知っている。大きなのも、小さなのも。
With Yet, you’re sure to get over them all.
『まだ』と一緒なら、きみはきっと全部乗り越えられる。
Play the kazoo or play the bassoon –
カズーを吹こう、バスーンを吹こう。
jam with the Yet, and you’ll soon be in tune.
『まだ』とセッションすれば、すぐに音も合うようになる。
Try skateboarding tricks like the Olly heel flip.
スケートボードの「オーリーヒールフリップ」みたいな技に挑戦しよう。
This Yet can get to the championship!
この『まだ』となら、チャンピオンシップだって夢じゃない!
Tongue twisters twisted your tongue in a knot?
早口言葉で舌がもつれちゃった?
Yet says, “Keep trying and practice – a lot.”
『まだ』は言う。「挑戦し続けて、たくさん練習しよう」って。
Six slippery snails slid slowly.
(6匹の滑るカタツムリがゆっくり滑った。)
A big bug bit the beetle a little bit.
(大きな虫がカブトムシを少し噛んだ。)
Be patient.
我慢強く。
Yet can’t do it all overnight.
『まだ』だって、一晩で全部はできない。
Some things take days, months, or years to get right.
うまくいくまでに、何日も、何か月も、何年もかかることだってある。
But if you keep leaping, dreaming, wishing – waiting, learning, trying, missing…
でも、きみが跳び続け、夢見続け、願い続け、待ち続け、学び続け、挑戦し続け、失敗し続けたら…
with the Yet as your guide along the way, you’ll do all the things you can’t do today.
『まだ』を道しるべにして進めば、きみは今日できない全てのことができるようになる。
Now you’re bolder, braver – starting to see, with Yet you can get where you want to be.
今きみは、より大胆に、より勇敢になっている。分かり始めているんだ。『まだ』と一緒なら、きみがなりたい場所に行けるって。
You finally did it, Yet knew you could.
ついにやったね、『まだ』はきみならできるって知ってたよ。
You’re not just riding,you’re getting quite good!
ただ乗ってるだけじゃない、すごく上手になってる!
But don’t stop now – you’ve got so much to do!
でも、まだ止まらないで。きみにはやることがたくさんある!
The good news is, this Yet grows with you.
いい知らせがある。この『まだ』は、きみと一緒に成長するんだ。
So no matter how big (or old) you may get, you’ll never outgrow – you’ll never forget – you can always believe in the magic of Yet.
だから、きみがどんなに大きく(年を)なっても、きみは『まだ』を卒業することはないし、忘れることもない。きみはいつでも『まだ』の魔法を信じることができる。
The end.
おしまい。
最後に
というわけで、今回は「できない」という気持ちにそっと寄り添ってくれる絵本『The Magical Yet』をご紹介しました。
この絵本が教えてくれるのは、「今はできなくても、未来にはできるようになる可能性がある」という、希望に満ちたメッセージです。この「Yet」という存在は、子どもだけでなく、私たち大人にとっても、新しい挑戦をするときの心強いお守りになってくれる気がします。
何かにくじけそうになったとき、「私にはまだ『Yet』が一緒にいる」と思えたら、もう少しだけ頑張ってみようという気持ちが湧いてくるかもしれませんね。